「郷愁。悲しみが広がります。」闇のあとの光 目黒の二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
郷愁。悲しみが広がります。
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詩的な映画だった。最初、雷がなる山の中の平地で、3歳ぐらいのかわいい女の子が牛を追いかけて歩いている。犬も牛を追いかけている。周りはだんだん暗くなる。場面が変わってオレンジ色に光る悪魔のような者が部屋に忍び込んでくる。裸で、左手に工具箱のような物を持っている。それを少年が見ている。
脈略のないシーンが続くが、ベースとしては、倦怠期を迎えた夫婦と二人の子供の日常を取り上げている。
この映画は子供時代や故郷へのせつないほどの郷愁を詩的に描いたものだ。
イメージの積み重ねなので物語らしきものはあまり無いが、描かれる内容は鮮やかで哀愁を伴う。牛、犬、猫、山、木、雲、霧、宵闇、雨、海、悪魔。夫婦が二人で歌を歌うシーンがあるが、あれも昔を懐かしむ歌の様だった。
山の木が切り倒されるのを見て、男が自分で自分の首を取って死んでしまう。これは自然破壊と人間の死をイメージとして表したものだと思うが、これには驚いた。
夫は自分の死を予感していた。最後に子供が「パパは死んだ」という。本当かどうか明らかにされず映画は終わる。悲しさ、切なさがしみじみと広がる映画だった。
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