「ターザンの肉体同様、「盛り」だくさんだが、「タイト」にまとまった好篇。」ターザン:REBORN しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
ターザンの肉体同様、「盛り」だくさんだが、「タイト」にまとまった好篇。
主演のスカルスガルドの言う通り、CG全盛の今日にターザン映画でできることは多い。
だが、バロウズ原作の、最古典のヒーローもののアドベンチャーゆえ、「既視感」に囚われることはやむを得ないことだ。いうまでもなく、「スパイダーマン」、「猿の惑星」リメイク版のCG猿など。
だが、それ以前に、やはり「成立しやすい企画」程度にみえるところがちょっと悲しい。
だが本作、ターザンの肉体同様、「盛り」だくさんだが、「タイト」にまとまった好篇となっている。
「ターザン:REBORN」(原題 The Legend of Tarzan)
邦題の「レジェンド」推しは廃れましたか。しかし、「リメイク」、「リブート」「リボーン」といろいろ考えるなあ。ご苦労様です。
ターザンというと、ディズニーのそれを思い出す人も多かろうが、映画バカのおっさんは、「類猿人ターザン」(1981)、「グレイストーク ターザンの伝説」(1983)。だが、同年代の人だと、この2作がテレビ等でなじみもあろう。
本作は、ターザンがジャングルから戻り「グレイストーク卿」としての生活がすっかりなじんでいるところから始まる。「グレイストーク」のファンからすると、とてもうれしい。
スカルスガルドのターザンに野生が足らない、という意見があるが、野生だけでいうなら、「グレイストーク」のクリストファー・ランバートのほうが、もちろんある。だが、「ジャングル前」と「ジャングル後」の違いで、本作のターザンの「ジャングル抜け」の英国貴族の容姿は当たり前。
その意味でスカルスガルドは適役。もちろん、スカルスガルド自身は短髪のほうが断然カッコイイ。
それでも、ほとんど訳の分からない超長身、はち切れんばかりの「タイト」なスーツ姿が見れるのもこの展開ならではだ。
ジェーンについても、「類猿人ターザン」のボー・デレク以外のジェーンをオレはすべて否定する(笑)。
だが、本作のちょっと「カワイイ」、「上品」な「万人に優しい」ターザン映画は、それで全く問題ないのだ。
ジェーンとターザンの愛の物語として、「これ以上ない美男美女の組み合わせ」なら、だれも文句は言えない。
その他のキャストも魅力的。安定の「小物」ワルツもいいが、コスチュームが素敵なジャイモン・フンスーが特にいい。
本作の見所は、映画ファンなら、特に前半。
本作の物語展開は、「グレイストーク」後の物語から、ジャングルへ帰る話と、植民地化された「故郷」コンゴに帰るところから。
ロンゲと、「どうせ行くんだろう?」と思わせる気乗りしない最初のターザン、「激ヤセ」サミュエルの同行が、「ランボー」シリーズにかぶってしかたない。
「故郷」に帰る、ジャングルで暴れる、人質の救出は、ほとんど「ランボー怒りの脱出」。老人の同行、現地人の協力、というほとんど「ランボー怒りのアフガン」。
愛の物語に、男子萌え要素も、抜かりなし。サミュエルの銃器の独り言説明なんて明らかに確信犯。
CGの猿も重量感あるし、ジェーンの助けの声を地獄耳で聞きつけ、なんもためらわずに、ダイブするターザンは圧倒的迫力。
映画が「ライト層」向けゆえ、どれだけ必要かわからないし、深みも感じられないが、「アバター」以降の、定番の「侵略者」退治ものとしては、まあ、それっぽい画になっている。
「シン・ゴジラ」に疲れた人には、次はこちらをみると程よく、緩む。
追記
ただし、「タイト」になったサミュエルのコメディリリーフの立場、そして同じ、バロウズ原作、ゆえか、SF古典のあの作品を思い出される。
そう、ディズニーの黒歴史「ジョン・カーター」(2012)。
ディズニーにはワーナーのこの企画をどう見たのだろうか、どう反応したのだろうか(ちなみにオレは「ジョン・カーター」は高評価。まとめ方もよく似ている。)
追記2
エンディングテーマのHOZIERの「BETTER LOVE」が素晴らしい。
(残念だが、そのあとの曲はなかったことに)