「キャラも立ちまくりで話も◎」ニード・フォー・スピード つかまるところさんの映画レビュー(感想・評価)
キャラも立ちまくりで話も◎
『バニシング・ポイント』『バニシングIN60』『Taxi』『ル・ブレ』『スピードレーサー』『ドリヴン』『RONIN』..好きな映画だけざらりと挙げましたが、この手の映画は山ほどありますし、僕も山ほど観てきました。
そのどれもが、「こんなのありきたりの話でいいやん」という感じなのに、妙に人間ドラマを見せようとして、そこがよくわからないままカーアクションシーンに入って、結局全部よくわからなくてがっくり、というような欠点を持っていましたが、その点この映画は全然OK!
ストーリーは「騙されたやつが騙したやつに復讐する」という小学生でも原稿用紙一枚にまとめられるほどのドラマしかなく、その中で主人公達がありったけのカーアクションを見せてくれるので、もう途中からはその「あ、これもやってくれるんだ」という感動で涙腺が緩みっぱなしになりました。
上映後即買ったパンフレットによると監督は『スピード』などの150本の作品に参加したスタントマンとのことで、そのキャリアの経験が、この映画のカースタントを思いっきりカッコよく撮っているんだなあとまた泣きそうになってしまったのですが、とにかくそれくらいおいしい映像が目白押しです。車が車とぶつかってぶっ壊れるシーンが人生の必需品な人は迷わず鑑賞してください。
また、上の方でストーリーが単純と書きましたが、単純なのと「キャラクターが立っていない」というのはまた別の話で、この映画はキャラクター、それも一番大切なヒロインと主人公のキャラが立ちまくりなので、観ていていつもは絶対こんな映画のしょーもないラブロマンスなんかに泣かない、という人でも思わずいいな!と思ってしまうことだろうと思います。
主人公も予告編で観たときは「なんだかぱっとしないなあ」と思ったのですが、ふたを開けてみてびっくり、エンドロールが流れる頃にはファンになってしまうこと必至のカッコよさでした。
そしてヒロイン、これが英国訛りのあるちょっとおてんば系の女の人なのですが、この人がなんか異常なくらい可愛いです。それでいてこの映画はエロシーン無添加という清潔っぷりを維持しているので、それもこの手の映画にありがちな下世話なおっぱいとかを排しているという点で僕にはとても善いことに思えました。
途中助手席のヒロインと主人公が走行中の車内で運転を入れ替わるシーンがあるのですが、そこのぐっとくる感じはかのチャーリー・シーン主演の『ザ・チェイス』を個人的に抜きました。
さらにこれだけ車で暴れ回っている映画なのに、主人公が殴り合ったり、銃を使うシーンもゼロなんですよね。これもほんとにすげえなと思って、ますます監督に頭が上がりません。
サントラもセリフも◎。若干感じるジャッカス風の雰囲気もナイスですね。
とにかくこういう映画好きな人に観てほしい、切実に観てほしい一本です。