「生物を生物たらしめるもの」パッセンジャー bg dauさんの映画レビュー(感想・評価)
生物を生物たらしめるもの
この映画を見てラブロマンス系統のものだと思う人もいると思うし、映画というものは個人の数だけ解釈があっていいと思う。
その中でも私はこの映画において【生物を生物たらしめるものはなにか】に着眼した。
それは特に主人公の立場になってみればすぐに分かるし、彼の行動からも分かると思うが承認欲求などの「孤独」の類のものだ。
人間、又は生物というものは「考える」物体でありまた「承認・愛を求める」物体である。
この映画では特にそれが強調されていたように感じた。例えば、バーテンダーの人型ロボット。彼は(映画のストーリー上わざと主人公の秘密をヒロインにばらす等の欠点を設けられていたが)人と高度に会話できる知能を持ち、人に対し考え、話すことができる。
しかしそれはいつも「主人公からロボットに話しかける受容的な立場」であり、ロボット自身が自分から会いに行くようなことはない。
それは当然、主人公は「孤独を埋める為」に考え、ロボットと話すのであったのに対しロボットは「プログラムされているから」考え、話していたからである。
この事からも、昔のように「ひとは考える葦である」等に見られる「考える」点において人という生き物の独特性を見出すのではなく、ロボットが自分で考える事ができるようになった昨今の時代では人を人たらしめるものとは「孤独を恐れる」ことではないのかなと思った。
最後の「理想を追求して今やるべきことを見失うな」という言葉はこれに則り言い換えると、「自分が様々な人間に認められ承認を得ることを追求して今やるべきことを見失うな」と言っているように見えた。
なので、監督の意思は分からないが、「SNS等でいつどこでも人と繋がれるこの時代、きちんとやることをやれ」という若者へのメッセージも暗に込められているとも考えることができる。
余談だが、蘇生措置をするシーンで人間がモノ同然に扱われているシーンは特に印象的。
技術者としてはあのようなバーテンダーAIに孤独を恐れるプログラムを組み込むとより人間らしくなるのかなと思った。
長文失礼致しました。