「拳と銃は別々の方がイイ。」ジョン・ウィック 全竜(3代目)さんの映画レビュー(感想・評価)
拳と銃は別々の方がイイ。
かつて裏社会で名を馳せた伝説の殺し屋が、愛する妻の死、そして、以前の雇い主のロシアン・マフィアの親分のバカ息子の暴挙により、殺戮者の血が覚醒し、復讐の鬼と化すバイオレンスアクション。
キアヌ・リーヴス久々の主演作だが、荒唐無稽な忠臣蔵に呆れ返った『RONIN 47』で懲りた私は、売りとしている《ガンフー》を目当てに劇場に向かった。
パンフを覗くと、銃撃戦&肉弾戦をノンストップで畳み掛ける新種の殺陣とのこと。
弾丸と拳との2つのシューティングを息もつかせぬ凄まじいテンポで融合するスタイルは、ダジャレっぽいネーミングセンスとは裏腹に、痛快な迫力で客の眠気を粉砕しており、純粋に面白い。
元々はジョン・ウーの香港、リュック・ベッソンのヨーロッパ辺りで開発・培養され、ハリウッドで要素を凝縮した末、ド派手に着火した手法である。
教会や女流スナイパーが鍵を握る展開は、其々の流れを抽出した印象を受けた。
特に今作では、クラブetc. の群衆の中で暗く狭い空間に追い込まれた際の接近戦に、ガンフーのノウハウが遺憾無く爆発している。
近年のハリウッドやと、『エクスペンダブルズ』シリーズでお馴染みの新銃術だが、キアヌは勿論、盟友ウィレム・デフォーと、シャープな物腰の渋い演じ手達が撃ちまくってド突き倒すギャップの効いた世界観が特徴的と云えよう。
『マトリックス』シリーズのスタントアクションを指揮した責任者がメガホンを取っているだけに、敵をテキパキと片付けるキアヌの冷血な殺気は、語られなかった過去のミッションや生い立ちetc. の不気味な陰を醸し、巧く惹き付けている。
しかし、贔屓としていた組織と殺し屋仲間一同を相手にするため、一気に裏切りが雪崩れ込む後半は、さすがに疲れて食傷気味だった。
単独の殺し屋がロシアンマフィア相手に玉砕覚悟でスマートに襲うスタイルでは、物語も殺陣も見事だったデンゼル・ワシントンの『イコライザー』と競べると、持続力はやはり劣る。
もっとポップで過激だった『キングスマン』も記憶に新しい。
宣伝で煽っていたような新鮮味は、序盤で失速しているので、続編は、もうエエかな、、、ってぇのが、現時点でのホンネだ。
つまり、地獄絵図や血飛沫の好みなんざぁ、観る人の其々でキマっちまう。
其れが映画渡世の哀しき運命(さだめ)ってぇモノである。
では、最後に短歌を一首。
『撫でる血に 刃の目醒め 注ぐ宵 宿す裏切り 懐の牙』
by全竜