「死神の復讐劇」ジョン・ウィック cromさんの映画レビュー(感想・評価)
死神の復讐劇
キアヌ作品は『マトリックスシリーズ』、『チェーン・リアクション』しか観ていなく、数は少ないですが、今作のキアヌはマトリックスの頃のキアヌに戻っていると伝わります。ストーリーはいたって単純、裏社会で最強の殺し屋と恐れられ、現在は足を洗った、ジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)が妻であるヘレン(ブリジット・モイナハン)を病で失い、そのヘレンが残した一匹の子犬(名はデイジー)と共に平穏な生活を取り戻していくも、ある時ガソリンスタンドで所有する車をロシアンマフィアに目をつけられ、家に押し入り、デイジーを殺され、自身も重症を負ったキアヌは生きる希望であったデイジーを失い、壮絶な復讐劇が幕を開ける。
このシンプルなまでのストーリーが最後まで尾を引いており、理解しやすい映画となっている。登場人物も非常にアクが強く、裏社会最強の殺し屋ジョン・ウィック、ロシアンマフィアのボスのヴィゴ・タラソフ(ミカエル・ニクビスト)、凄腕のスナイパーでジョンの旧友マーカス(ウィリアム・デフォー)、謎の女殺し屋のエイドリアン・パリッキ(ミス・パーキンス)、ロシアンマフィアのボスのドラ息子のヨセフ・タラソン(アルフィー・アレン)、暗黒街の住人である闇医者、掃除人、裏社会でも恐れられる帝王ウィンストン、ウィンストンが経営する謎のホテル・・・など。アクション映画だけあって、殆どの登場人物が銃撃戦を繰り広げるが、中でもジョン・ウィックの存在感は凄まじい。彼の最強の所以であるカンフーと銃撃を融合した『ガンフー』と呼ばれる戦闘スタイルはゼロ距離、ダブルタップを連発し、隠れている相手には足を撃ち、怯んだところを狙い、頭を撃つという無駄が一切なく、非常にテンポよく敵が倒れていくため見ていて気持ちいい。このガンフーは両手を胸の前で合掌するような状態で銃を構えるため、狭い室内での撃ち合いが有利になり、近距離で射撃が可能になる。
銃撃だけではなく、近接格闘にも通じているため、接近戦で無類の強さを誇る。ジョンはガンフーと持ち前の戦闘スキルを使い、たった一人でロシアンマフィアとやりあう。このガンフーは『リベリオン』の『ガン=カタ』に強く影響を受けていることが一目瞭然だ。
格闘アクションは恐らくだが、ロシア軍特殊部隊の格闘術のシステマだと思われる。近接戦闘だけではなく中距離、遠距離の戦いもあるため、飽きが来ないアクション映画に仕上がっている。
音楽もかっこいい曲が多く、特に中盤の酒場のBGMとEDは素晴らしい。たった一人で一大組織を壊滅させるのはスティーブン・セガールやジェイソン・スティサム、アーノルド・シュワルツェネッガーなどいるが、キアヌがもつ人間離れしたオーラと怒りと悲哀に満ちた表情により、復讐といった本来の目的を忘れることなく観ることが出来る。続編も製作が決定しているので、今から楽しみでしょうがない。