「切なさつのる姉弟愛。」小野寺の弟・小野寺の姉 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
切なさつのる姉弟愛。
実験刑事トトリや、只今放送中の信長協奏曲を手掛けている
西田征史の長編初監督作品。小説が2013年に舞台化されて、
主演キャストもそのまま受け継がれての映画化だそうだ。
もっとユルユルでオタクな話だと思って観てみたのだが、
昭和情緒あふれる人情喜劇に、終盤でホロリと泣けてしまう。
そこかしこに漂う、あぁそうそう。という兄弟ならではの記しが
家族の形成に大きな影響を齎していることが分かる。
少し前に観た「シンプル・シモン」を思い出していた。
あれも同じような境遇の話だった、兄には将来を誓い合う恋人が
いたのだが、障害を持つ弟と同居を始めると彼女に去られてしまう。
その彼女の言い分と、今作の元カノ・麻生久美子の言い分は同じ。
若い頃の私なら、何よこの非情な恋人は!と怒り狂うところだが、
今は恋人側の気持ちも理解できる。仲の良い家族や兄弟姉妹は
確かに素晴らしいのだが、互いに依存し合っている状況になると、
家を出て自立することが遠のく一因を築いてしまう。今作の姉弟も
互いを思い遣るあまり離れられないのだが、いつか独立しないと
この先結婚はできないだろう。弟の抱えるトラウマが、姉につけて
しまった身体の傷と自身の心の傷になるのだが、それを乗り越えて
彼が新しい恋に踏み出せるかが見どころ。姉も同じく。
この二人が姉弟!?とビックリするのは初めだけ^^;
観ているうちに波長がピッタリ合う二人にどんどん入り込んでいく。
さすが舞台で共演しただけあって、片桐向井の姉弟ぶりはお見事。
不器用な二人が少しずつ乗り出す恋路に、観客も「頑張れ!」とつい
力を入れて応援してしまうのだが…。
片桐はいりが凄いのは、役と本人に違和感がなさすぎる(失礼!)
まさか!と思われた恋の顛末が…あぁ。。となるところでは、
ナンだよ、たまにはいい思いさせてやれよ!なんて思ってしまう。
ありゃないだろーが…(ミッチーみたいな人っているけどねぇ)
と思いながら、でも恋をするのも辛いけど、しないよりはずっといい。
と思う男女が増えるといいな、大きなお世話ながら思ってしまった。
自転車で買出し、一汁三菜の朝食、玉のれん、畳貯金に冷蔵庫メモ。
懐かしい商店街の雰囲気さながらに切なさがつのるいいドラマだった。
(タクシーの課金がいちばん泣けたね。あそこで上げるんかい!も~)