「原作無視で途中退席」紙の月 やまちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
原作無視で途中退席
テレビCMで流れていた予告編が気になり、原作を購入、読破した上で映画館へ。
はっきり言ってただのポルノ映画に成り下がっている、そんな印象。
田園都市線沿線が舞台であり、土地勘があるから期待していたものの実際は神戸。それはさておき、梨花と光太が体の関係に落ちるのがあまりに短絡的。梨花の家庭、すなわち子づくりの問題を筆頭とした「夫婦間の見えない壁」の描写があまりに少なすぎる。この「見えない壁」によって梨花は心のどこかに隙間を感じるはずなのに、この描写が少ないものだから原作との差に違和感を抱く。
原作以上に何度も入るベッドシーンもはっきり言って不愉快。言い方は悪いが、光太がただの獣(サル)にしか見えない。演技も今一つなのもあるだろう。原作では、初めて一夜をともにしたシーンはお互いにとってそれなりのウエイトを占めるはずなのだが、映画ではその描写が軽すぎて、単に尻軽女と尻軽男の馴れ初めにしか見えず、ベッドシーンを不必要に充実させている感が否めない。それなら梨花の家庭での心模様をもっと丁寧に描写すべきだと思う。それに、原作では性欲よりは梨花が「モノ」や「カネ」で光太をつなぎとめていたはずだが、それも無視されており、性欲が中心だと思われても仕方ない描写となっている。
原作無視と言えば、光太の借金の原因の描写も不十分。映画にのめりこんで学業を疎かにしていることをはっきりさせないと、単に祖父がケチでバイトに明け暮れる苦学生というイメージになってしまう。全体的に、物事に対する背景の描写が大ざっぱすぎる。ベッドシーンを充実させるなら、他に鍵を握るシーンはいくらでもあるはず。
原作とのあまりの乖離に開始1時間で退席。その後はどうなったか不明だが、キャスト陣にも無理があるのではないか?宮沢りえははっきり言って似合わない。池松は演技がヘタすぎる。強いて言うなら脇役?の小林聡美と大島優子はいい味を出していた。大島優子は今どきの女の子という感じだが、すっかりアイドル色は抜けており、今後の成長が楽しみ。