「原作とは全くの別物」紙の月 Hiroki Abeさんの映画レビュー(感想・評価)
原作とは全くの別物
まず、率直な感想として面白くない。
原作既読で鑑賞したが、改変がヒドい。オリジナルキャラが2人、それぞれに重要な役割を担っている。よく角田光代はOKしたもんだなと心配するくらい原作で伝わったものが違う角度で届いてくる。吉田大八は原作を読んでこう解釈したのかと、ある意味、新鮮な気持ちになった。
映画としては何かが起きそうで起きないギリギリの場面を演出している。ただ、原作読んでない人は設定から話しの流れ、登場人物の心情までさっぱりわからないと思う。多分、レビューも宮沢りえが良かったという意見が大多数になるんじゃないかな。
以下はあくまで自分なりに原作を解釈した意見なので参考程度に読んでもらいたい。
そもそも原作は角田光代お得意の何かほんの少しだけ満ち足りない女性を題材にした物語。その何か満ち足りないものを手に入れようとしたけど、結局、それじゃなかったというのが大筋で、そこのアイテムとしてお金や巨額横領事件や恋愛が絡んでくる。しかし、映画では何かほんの少しだけ満ち足りない女性の描写が非常に弱く、横領する動機がはっきりとわからない。しかも横領して行なう行為そのものが目的になっている。なので、劇中に登場する宮沢りえはただの倫理観が逸脱した馬鹿に写ってしまっている。あとは大島優子や小林聡美など対比で登場する2人も弱い。だって、宮沢りえがただの馬鹿にしか感じないし、感情移入や共感が出来ないから。後、オシャレな音楽とか妙に鼻につくから止めて欲しい。もっと自然にオシャレして欲しいね。
と、まあ、こんな感じでため息の連続間違いなしの本作。吉田大八は桐島の一発屋なんて呼ばれないよう頑張ってもらいたい。