「ついに映画化されたピンチョン」インヒアレント・ヴァイス arlecchinoさんの映画レビュー(感想・評価)
ついに映画化されたピンチョン
すっかり遅まきながらようやく放送で観ました。原作はピンチョンの「LAヴァイス」。「ピンチョンにしては」軽いハードボイルドもの笑。60年代のマリファナ漬けでグダグダなヒッピー風私立探偵が事件を解決する話です。
ピンチョン!! いやあ映画化されるとは思わなかったなあ。しかもPTA(P.T. アンダーソン)で。大好きな作家です、って言いたいところだけど3冊くらいしか読んでないし積読が棚に3本くらいあるし....だって読むのに凄く時間がかかるんだもの。「重力の虹」には昔から映画化の話はあったみたいだけど頓挫してるみたい。
素晴らしい大傑作です。PTAの濃密さとピンチョンの濃密さがあいまってねっとりしています。しかも長尺。しかもたくさん登場人物の関係が込み入ってる。情報量の多さがハンパない。消化不良を起こす人が出てもおかしくないですね。じっくり人間関係を整理しながら観ないとストーリーを見失いそうです。
原作と監督を考えたらもっと幻想的な話かと思いきや、探偵小説としては意外とちゃんとしたストーリーで腑に落ちました。終りもさわやか、というかよかったよかった、となります。PTAらしいちょっと皮肉なユーモアがたくさん入っていて、すごくおいしいです。原作からしてそうなので、相性がいいんでしょうね。
キャスティングも抜群。J. フェニックスもJ. ブローリンもB. デル・トロも素晴らしかった。胸焼けしそうなメンツですけど笑
私としてはPTAで一番好きな作品になりました。
最初はロバート・ダウニーJrがドックを演じる予定だったらしいですね(アイアンマンで忙しくてスケジュール調整できなかったらしい)。それをきいたらダウニーJrのをすごく観たくなりました。小説のドックは軽薄なヤツなのでJ.フェニックスよりダウニーJrのほうがあってる気がします。それと、ドックはたまにドレスアップしてハイソなところに出没するんですが、その時のスーツ姿はダウニーJrのほうがサマになってると思うんです。いつもは軽薄なヒッピーだが、いざという時にはキメる感じ。ハードボイルドには彼のほうが似合ってたかもしれません。