「探偵“迷”物語」インヒアレント・ヴァイス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
探偵“迷”物語
「ザ・マスター」に続くポール・トーマス・アンダーソンとホアキン・フェニックスの2度目のタッグ作は、トマス・ピンチョンの小説を映画化した異色の探偵ミステリー。
この作者についてはまるで知らなかったが、それも当然。アメリカ現代文学の巨人と評されながらも、公には一切登場しない謎多き覆面作家なんだとか。
異端の作家×強烈個性の監督&主演俳優なのだから、真っ当な作品である筈がなかった。
ヤク中のヒッピー私立探偵ドックは、元恋人の依頼で不動産王の調査をするも、巨大な陰謀に巻き込まれ…。
あらすじはまともな探偵映画のようだけど、これが非常に難解。
あっちにふらふら、こっちにふらふら、脱線エピソードも多く、人間関係も複雑。
元恋人の依頼が事の発端。元カノをヤクと例えるならば、そのヤクでラリって、出口の見えない迷宮に迷いこんでしまったような。
おそらく自分の頭じゃ半分も理解出来なかったが、単につまらなかった!…と切り捨ててしまうほど嫌いにはならなかった。
気に入った点、魅了された点が幾つかあったのも事実。
ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン、オーウェン・ウィルソン、リース・ウィザースプーン、ベニチオ・デル・トロ…出るわ出るわの個性派が、一癖も二癖も三癖もある登場人物を怪演。
フェニックス、ブローリン、デル・トロの三人が顔を合わせるワンシーンなんて、贅沢なくらい濃い!(笑)
元恋人役のキャサリン・ウォーターストンがその美貌と魅力で見る者を惑わす。
ヒッピー、ヤク、エロ、犯罪、陰謀…混沌と怠惰の70年代カルチャーがクセになる。
選曲センスも抜群で、坂本九の「上を向いて歩こう」が流れたり。
これまでの監督作で言うと、「ブギーナイツ」の雰囲気と「パンチドランク・ラブ」のオフビート・ユーモア。
非シリアス作品でもアンダーソンが一筋縄ではいかない手腕を発揮。
初見なら誰もが煙に巻かれる事必至。
何度か見返したくなる、ある意味映画好きの為の作品。
さて、また迷宮に迷いこむとしよう。