「一周回って「邦題絶賛論」」白鯨との闘い しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
一周回って「邦題絶賛論」
確かにオレも、これまでのレビューの中にも邦題について、いろいろ言ってきたことはある。
原題「In the Heart of the Sea」
直訳すると、「海の中心で」あるいはもっと意訳すると「心の奥底にて」
結論から言うと、この映画のテーマは
「変わることの勇気」
心の奥底に自分のこだわってきたこと、しがらみ。
主人公チェイスは海の男であることに誇りと自信、こだわりを持っていた。船長ポラードは名家の出故、その立場を守ろうとしていた。
そんな二人が、大海原で自分たちのそれぞれの主張を通そうとし、船内の関係が崩れつつも、仕事をきっちりとこなす。そんな彼らがさらなる野望を遂げるため、噂のクジラの大群、そして「白鯨」を狙うため、初めて一致団結する。
しかし、圧倒的な存在の白鯨は、彼らをいとも簡単に蹴散らす。その白鯨に対し、チェイスは「オレの獲物だ」と海の男にこだわり、あっけなく逆襲に会い、船員全員を窮地に追い込んでしまう。
これ以降の話は省略するが、2度目のチャンスに彼が白鯨に攻撃しなかったのは、
「攻撃しても負ける」「攻撃する意味がない」
→
「勝っても意味がない」
クジラ狩りの名手であることのこだわりを棄てた瞬間である。圧倒的絶望的な極地で、自身の本当の「心」を知ったことで、それを背負っていくことを決めたのである。
「変わることの勇気」
拾った命、その心にしたがって生きることこそ、「変わることの勇気」。それこそポラードが聴聞会にて、その立場を差し置いて真実を語った理由だ。
(とはいっても、チェイスについては、ほぼほぼラストの、Wake up! Wake up!には、「タイタニック」かよと、思わず数少ない笑いどころ、いや笑っちゃいけないシーンだが。でもあそこで死んでしまうとテーマが飛ぶ)
そして後年のニカーソン。こちらも真実を語ることで、ようやく彼の闇が晴れる。
(まあ、正直こういう告白式、というか「ライフ・オブ・パイ」式にしたのは減点だと思うけどね)
・・・
邦題「白鯨との戦い」
「白鯨」は「変わらない、変われない」オレたちを圧倒的絶望の中にて「変わること」の必要性を教えてくれている。
だから「白鯨」との「闘い」でなければならないのだ。
エネルギーも変わる。
時代も変わる。
邦題批判が的外れなお前も変われ。
マジ、いい邦題だ。本作を良く理解して考えられてる。
また劇画調のポスターにもあってる。まあ、映画のテーマからすると、あちらの、チェイスが一人モリをもって向かっているほうが合っているかもしれないけどね。
追記
時間の推移がめちゃくちゃ早いので、あっという間に激ヤセしたりして、ダイジェスト感が出てしまい、そのぶん損をしているし、それに対して、テーマがはっきり浮き上がってくるのは本当にラストぎりぎりまでなので、前半のキャラクター紹介がもたもたしすぎているところが痛い。
追記2
クリス・ヘムズワース。
メル・ギブソンとカート・ラッセルの真ん中あたりを行ってほしい。