劇場公開日 2016年1月16日

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「究極のサバイバル」白鯨との闘い 玉川上水の亀さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0究極のサバイバル

2016年1月15日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

怖い

興奮

ハーマン・メルヴィルの名作「白鯨」のモデルである捕鯨船エセックス号沈没事故の顛末を書いたナサニエル・フィルブリックの全米図書賞ノンフィクション部門受賞の原作を、ロン・ハワード監督がクリス・ヘムズワース主演で映画化。
ハーマン・メルヴィルの方は海洋冒険小説として捉えている人が多いと思うが、それに対して本作は冒険物というよりサバイバル物として捉えた方が良いと思う。
映画はハーマン・メルヴィルが「白鯨」を書く為に捕鯨船エセックス号の生き残りクルーから聞き取り調査する形式で展開されていく。
舞台となっている19世紀のアメリカにおいて鯨から取れる鯨油は生活必需品であり、食用というより資源確保という目的で捕鯨は行われ、事業化されている。
事業となれば、利潤追求の為に海に棲む最大の哺乳動物である鯨を乱獲する人間たち。
本作では、その際限の無い金銭欲を持つ罪深い人間を罰するように、神の如き存在の30メートルを超える巨大な白鯨が登場する。
映画で描かれる捕鯨シーンや白鯨とのバトルシーンは迫力満点!
ただ白鯨との闘いで払った代償は余りにも大きい。
そして、映画の後半から描かれるサバイバル劇は筆舌に尽くし難い。
ハーマン・メルヴィルの「白鯨」は単なる冒険小説ではなく、基底にキリスト教的な宗教観があり、それは本作でも野生動物保護を含めて宗教的な立場から禁忌を犯す罪深い人間に対する贖罪のドラマが描かれていると思う。

玉川上水の亀