「負け戦」バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
負け戦
アメコミもので好きなのは、ダントツで
1位『デアデビル』…原作フランク・ミラー、主演ベン・アフレック。(ウケ狙いではなく、本気で好き。バカだなあ。)
2位『ウォッチメン』…監督ザック・スナイダー。
ならば、監督ザック、主演ベン、原案フランクミラーの本作は、どうしたって好きにならざるをえない。冷静に観れば映画としてどうなんだろう?と思いつつ、好きなものは好き。
パラパラと落ちていく真珠、タコ殴りされる初老のバットマン、ふわーと宇宙に漂うスーパーマン。フランクミラーのコミックの画、もしくはト書き、そのまんま。コミックの印象的なシーンを切り貼りして、そのスキマをムリクリ繋いでいくような展開。ストーリーよりもシーン重視。そんなにフランクミラーLOVEならば、いっそコミックのページをそのままスクリーンに大写しにすりゃあ良いのに。
フランクミラーが描く所の、正義に固執する偏執狂バットマンは、ヒーローの悲哀の象徴でもあるが。
ザックに翻案されると、表層的で人工的で、悲哀切々にはならない。それでも、好きなモノを真似たったという厨二魂にグッとくる。
好きなモノを真似たというのであれば。
そもそも『ウォッチメン』のキャラクター(ナイトオウルやDr. マンハッタンなど)自体が、バットマンとスーパーマンを意識してカリカチュアしたものだった。
ザック監督は、既に『ウォッチメン』で、バットマンvsスーパーマンを撮ってるんじゃないか、本作はその豪華版なのではないか、という感じもする。正統派ではなく裏バットマンというべき『ウォッチメン』の方が、ザック監督の作風にあってるしなあ。
そんなモヤモヤを吹き飛ばすのが、バットマンvsスーパーマンの土俵とはまた違う悲を背負ったワンダーウーマンの登場であり、彼女の有無も言わせぬ中腰にしてやられる。自分でもバカだなあと思いながらも、無条件でウオーと興奮してしまう。
女の人がドガシャカ活躍する映画…『エンジェル ウォーズ』とか『デス・プルーフ in グラインドハウス』とか『チャーリーズエンジェル』などなど…とにかく大好きなので、ワンダーウーマンのシーンはホント楽しかったなあ。
追1:一緒に観に行った人は、テレビ版のワンダーウーマン(くるくるまわって変身するヤツ)の大ファン。こんなのワンダーウーマンじゃねえ、と怒っていた。アメコミファンってホント面倒くさいですね。
追2:その人がもう一つ呆れていた点。
偏執狂の筋肉フェチ、バットマンがどんなに身体を鍛えようが、結局の所、能力に差がありすぎてメタヒューマンの闘いには手も足も出ない、はなから負けは判っている、ワンダーウーマンに助けてもらうしかない。
一緒に観に行った人は、そんな所に対してバッカじゃねえの?何のためにタイヤ引いてるのかと呆れていたが。
でも、「はなから負け戦」というのがザック・スナイダーの真骨頂なのでは?『300(これも原作フランクミラー)』でも『ウォッチメン』でも『エンジェル ウォーズ』でも、勝てそうにも無い闘いに手を出す。なんで、無理して闘うのかわからない。「はなから負け戦」というゴシック臭が、ザック監督の魅力なのではないか。
好調かつ計画的なマーベル(MCU)に対し、行き当りバッタリが漂う最近のDCシリーズ。ある意味これも「はなから負け戦」なのかなあ。
追3:映画館で3D、2D両方観たが、3Dの方は画面が暗すぎてよく判らなかった。立体的な奥行きのある画作りというよりも、コミック的な画作りに執着していて、まるで3Dで観る意味ない映画だなあと思った。
それにしても、公開から1年以上も経ってこんなに感想を長々書くのもどうかしてるなあ。