「法廷サスペンスではなく、父子の人間ドラマ」ジャッジ 裁かれる判事 CRAFT BOXさんの映画レビュー(感想・評価)
法廷サスペンスではなく、父子の人間ドラマ
法廷サスペンスとして扱われているが、本作は、判事の父と弁護士の息子という設定を使った父子の人間ドラマだ。
インディアナ州の小さな町で長い間判事を務めた父(ロバート・デュバル)が、妻を亡くし葬儀を行なった日に死亡事故を起こす。事故の被害者は、以前、父親が判事として判決に後悔を残した事のある町のクズ男。だが、父親には、事故を起こした時の記憶が一切ない。
父親に反発してインディアナ州を飛びたして以来、一度も帰省せず、どんな悪党でも無罪を勝ち取るために手段を問わないやり手の弁護士の息子(ロバート・ダウニー・ジュニア)は、母親の葬儀のために久しぶりに故郷へ戻ったが、父親が事故を起こしたため、その弁護をする事になる。
事件の真相を追いながら、息子は遠い過去と向き合い、自分の人生を見つめ直して行く。それは、反発していた父親とも向き合う事。父親の判決のあと、息子はどう変わって行くのか……。
判事である父親を法廷で追い詰める検事役には、ビリー・ボブ・ソーントンとくれば、法廷での丁々発止が楽しめる法廷サスペンスを期待するが、残念ながら、新たな証拠や証人を得ながら、それが否定されたり裏切りがあったりして、紆余曲折の末に裁判で勝利を勝ち取る……という展開は、ほとんどない。
この手の法廷ものには重要なキャラクターである弁護士の助手(彼のキャラクターがいい味であるのは否定しない)が、活躍するようなこともない。
あくまでも、傲慢で冷淡なシカゴのやり手弁護士が、反発し合う父親と向き合い、自分の人生を見つめ直すヒューマンドラマとして仕上がっている。
法廷サスペンスを期待した割に、普通のヒューマンドラマに拍子抜けしたが、主演の二人や脇を固める役者たちがどれもいい味を出していて、ストーリーに引き込んでくれる。それほど面白いというものではないが、役者たちを楽しむにはいい作品。