「老醜とは何か」ジャッジ 裁かれる判事 Awareさんの映画レビュー(感想・評価)
老醜とは何か
※ブクログからの転載です
母の葬儀で久しぶりにシカゴからインディアナ州の実家に帰ったハンク(ヘンリー)(ロバート・ダウニー・Jr.)。敏腕弁護士だが、家庭はうまくいっておらず妻とは離婚協議中で、実家でも長年判事として地元の人から尊敬されてきた父ジョセフ(ロバート・デュヴァル)と険悪な関係。
葬儀が済んでシカゴへ戻ろうとしていたハンクだったが、父がひき逃げの容疑で警察に取り調べを受けているという連絡が入り……というお話。
年を取ると、色々なことがうまくできなくなってくる。まして、病気になっていたらなおさらだ。
「他人に下の世話をさせたくない」なんてよく言うけど、他人に迷惑をかけたくないというだけではなく、自分の見苦しいところを見せたくない、という意味でもあると思う。
老いたゆえの見苦しさを「老醜」という。この作品で、ハンクの父ジョセフは記憶がときどき曖昧になったり、排泄物をまき散らしてしまったりする。その姿は確かにかっこ悪いかもしれない。
けれども本当に醜いのは、残り少ない生にしがみつき、自らの信念を枉げてしまうことだ。「真実しか語らない」と誓う法廷において、そして息子たちの前で、嘘をつかなかったジョセフは見苦しくなどなかった。彼は判事として生きてきた自分の人生に背かなかった。全てをごまかして有罪を免れたとしたら、それは彼にとって刑務所に入ることよりもずっと不名誉なことだっただろう。
裁判が終わって、ジョセフはハンクに少しも声をかけなかった。最初は冷たいな、と思ったけれど、あれはきっとハンクのことを息子ではなく弁護士として認めたからなのだろう。
厳格な父と不良息子の和解というストーリーにさほど目新しさはないものの、ロバート・ダウニー・Jr.のキャラクターが添えられることによってなんとか没個性を免れているように思う。
ただ、見慣れたいつものRDJで多少食傷気味でもあるし、実年齢に比べて若過ぎる役柄のように感じた。ヴェラ・ファーミガの同級生にはちょっと見えないような……。もう少し落ち着いた大人の演技も見てみたかったなあと思った。あと彼だけスターのオーラが出過ぎていて兄弟が兄弟らしく見えないんだよな!(笑)
ロバート・デュヴァルはこの映画が初見だったけれど、さすがの貫録ですごい俳優さんなんだなっていうのが一目瞭然だった。後で「ゴッドファーザー」を観て、この頃はまだ若かったんだなあと思った。良い俳優さんが年老いていくのは仕方ないこととはいえ、やはり少し悲しい。でも、こういう役を演じるのに相応しい年齢になってお現役で活躍してくれているというのはありがたいことだな、と思った。