「彼らの歌声に恋してる」ジャージー・ボーイズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
彼らの歌声に恋してる
「君の瞳に恋してる」「シェリー」などの名曲で知られる60年代の伝説的ポップスグループ“ザ・フォー・シーズンズ”の栄光と挫折を描いたブロードウェイ・ミュージカルを、クリント・イーストウッドが映画化。
某老舗映画誌では2014年間1位に選出。この某老舗映画誌、やたらとイーストウッド贔屓が鼻に付き、何だまたかよ…とうんざりすらしていたが、悔しいかな、好編だった。
エピソード的には至ってシンプルだ。
無名時代、名曲誕生秘話、成功、確執、再起…。
下手すりゃダイジェスト的になりがちだが、イーストウッドの特徴とでも言うべきシンプルながらも真摯な演出で、正直曲は知っていてもほとんど知らなかった彼らの軌跡がすんなり伝わってくる。
加えて、イーストウッドの演出は彼ら若者への眼差しそのもので、優しく温かい。
打って変わって、ステージでのパフォーマンスとエンディングのミュージカルは、極上の高揚感。
知ってる曲が流れると、胸躍る。
特に「君の瞳に恋してる」は、その誕生秘話も含め目頭を熱くさせる。
“ザ・フォー・シーズンズ”を演じるのはブロードウェイ版と同キャスト。
映画界では無名だが、そのまま彼らのサクセスストーリーとなった。
それにしても、吹替ナシの生の美声には本当に魅了される。
彼らの後見人で地元マフィアのボス役、クリストファー・ウォーケンは言うまでもなく貫禄たっぷり。(実はミュージカルもイケるウォーケン、エンディングだけちょこっと披露)
栄光に挫折はつき物。
それでも、音楽への熱い思いが彼らを一つにする。
数々の名曲がそれをひしひしと感じさせる。
イーストウッドが見つめるのは、華やかさではなく、彼ら個々のドラマ。
音楽映画にまた一つ佳作誕生。
思ってた以上に好編であったが、さすがに自分個人の年間ベスト!…とまでにはならなかった。