「無意識にため息が漏れる美しいビーチで展開するヒロイン達の幻想美に陶酔する」美しい絵の崩壊 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
無意識にため息が漏れる美しいビーチで展開するヒロイン達の幻想美に陶酔する
昨年の末、94歳で亡くなった、英国を代表するノーベル賞受賞作家ドリス・レッシングの原作による短編の映画化と言う本作には本当に度肝を抜かれた!
今のシーズンは丁度、日の出は早くなり、日の入りも延びて、もう夏は目の前。
とても海が恋しいシーズンの到来で、そんな海の良さを最高に満喫出来る初夏にこそ相応しい美しいお薦め映画は、この「美しい絵の崩壊」と言う名の作品なのだ。
映画の舞台は、オーストラリアの海辺の美しい町で、この物語の舞台として重要な位置を占めている。と言うより、海その物も映画の重要な主人公であると言う方が正しい気さえする。
ロビン・ライトとナオミ・ワッツ演じる2人の主人公と彼女達のそれぞれの息子達を軸とした彼ら4人の複雑で、妖艶な香高いラブストーリーだ。
正に絵画の様に何処までも透き通る海の美しさと、その海で戯れる彼ら4人の特別な人間模様は、幻想的でも有り、一時の迷宮にハマった夢の世界の物語なのかも知れない。
その昔邦画で、「天国に一番近い島」と言う映画があったが、本当に海の美しい景色を舞台に展開する物語は、それだけで私達観客を楽園に誘うイメージ力が有るものだ。
そして、アダムとイヴがリンゴを食べてしまう迄、楽園に暮していた人間には美の世界が
何処までも、何処までも、妖しく、甘く美しい魅力を放って止まないのだ。
この作品も、正にこの美し過ぎるには、ヒロイン家族達しか登場せずに、プライベートビーチのようなその海の世界は、彼らの白昼夢なのか、それとも大人たちの禁じられた幻想界と言う事なのだろうか?
実に英国とは不思議な国だ。伝統を重んじ、保守的であるのかと思えば、あっと度肝を抜かれる流行の先端を全速力で疾走するような、大胆な一面を垣間見せるのだ。
こんな、危なげな関係の人間模様を、時代的にもし日本ならば、大正生まれの女流作家の手に因ってこの原作が生れていると言う事一つ考えてみても本作を観る価値が有ると思う。
そして本作の監督もフランスの女性監督が撮っていると言うのも、この映画をより一層妖艶でスリリングな妖しい美の世界一色に展開させている。
うっとりとため息が無意識に漏れてしまうような幻想美の世界を是非堪能して頂きたい。
これはあくまでも、文学作品の映画化だからこそ楽しめる世界観なのだろうと思う。
もしも、このヒロイン達のような生き方を私達が、本当に現実的に生きてしまうなら、この作品が表現しているような美の世界を何処まで保つ事が可能なのかは疑問が残るが、それだからこそ、人間はこう言う禁断の世界観に時として美や、憧れを抱くのだろう。
大人の女性の揺れる恋心が最高に美しい本作は正に絵画の世界だった!