「素敵だと思ったのは、僕が男子校出身だから、だけじゃないはず。」チョコレートドーナツ soratoさんの映画レビュー(感想・評価)
素敵だと思ったのは、僕が男子校出身だから、だけじゃないはず。
東京都渋谷区で同性のカップルが夫婦として認められるという動きがあったということは記憶に新しい。芸能界にしろ映画にしろ音楽にしろホモやレズについて肯定的に好意的に(好奇的に)表現されているものもよく目にする。
だがこれは世間が彼らに対する差別の色眼鏡を外したと言うことには決してならない。僕自身、もし自分の身近な人が同性愛者であった時変わらず接していられるかと問われると返答に窮するだろう。18年間一般人として生きてきた僕は、どこかで、彼らを(彼女らを)異常だと判断してしまっているのかもしれない。
しかし本作で描かれるのはその同性愛者たちによる、どう見ても美しい真実の愛と絆、そして醜くて惨めな僕らの常識である。
劇中、胸を打たれたシーンがいくつもあった。
まず、ルディが「ドーナツは体に良くない」という場面である。一瞬、本物の母親は彼なのではないかと錯覚するほどに彼の子供(しかし赤の他人だ!)に対する無意識の愛を感じた。
マルコの監護権を審理する裁判で証言した調査員にも震えた。初めは明らかにゲイカップルに対して懐疑的であった彼女が、法廷でははっきりと素晴らしい両親だと断言する。僕は思わず拍手してしまった(涙を流しながら)。
そして最後。ルディが歌いあげる歌詞は僕にとって救いとなった。any day now. . .そう、もうすぐだ、本当の意味での理解まで、もうすぐそこまできているはず、と思えた。何の罪もない男の子の命を奪ったのは、世間の常識と偏見であると最後には皆んな気づいたはず(もう遅かったのだけれど)。
それでも僕は本当の意味での同性愛理解はできなかった。男性同士のキスにはぎょっとして、抱き合うシーンは目を背けてしまったほどだ。ただ、本当に楽しそうと思ったし、彼らの生活は一般的な恋愛と変わらない、とても魅力的なものだった。
しかし理解しようと努力したことは無駄だっただろうか。そもそも躍起になって彼らを理解しようとしたのはなぜだろう。その時点で僕は彼らの人間性に惹かれてるのかもしれない。ただいちゃついてるだけなにに、周囲の人間たちはどうして彼らを認めないのか。いや、本当の意味での理解なんて彼ら二人ができていればいいじゃないか。そんなことも考えさせられた。
ここまで絶賛しておいて星5に達させなかったのはなぜかと思うかもしれない。
それは僕もマルコと同じく、どんな物語にでもハッピーエンドを求めてしまう、チョコドーナツ好き男子だからである。