劇場公開日 2014年4月19日

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「この世は差別で満ちあふれている」チョコレートドーナツ ふーみんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この世は差別で満ちあふれている

2017年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

英国の個性派俳優、アラン・カミング主演。
歌手を目指しながら、ショーパブでドラァグクイーンを演じるゲイの男性が
ひょんなことから知的障害を持った子供と出会い
勤め先に客として訪れた、後のパートナーの男性と3人で一緒に暮らし
やがて本当の親子のように絆を深めていくが…

正直、見ていてきつかったですこれは。
今でこそ、セクシャルマイノリティーに対する偏見というのは
徐々に和らいできていると思いますが
この映画の舞台である1970年代は相当彼らに対する
偏見、差別がきつかったのだろうなと思いました。

母親の薬物問題で、育児放棄状態であったダウン症の少年マルコを
血の繋がりもない、しかもゲイである男性2人が引き取る。
法律の知識が無くとも、差別社会であるアメリカでは容易なことでないのはわかります。

しかし、映画の中で描かれる主人公カップルは
とても愛に満ち溢れていて、一片の曇りもない想いがありました。
まるで本当の親子のように。いや、それ以上かもしれません。
ですが、社会というのは厳しい…
これがもし男女のカップルだったら?
誰も何も言わないのでしょうか?
だけど、そんなものは個人個人の価値観であって
ゲイであることと、子供を育てることには何の関係もないことは
少し考えればわかるはずなのに。

この映画を見て、差別というものはおそらく
これから先、完全になくなることはないのだろうなと思いました。
先程、セクシャルマイノリティーに対する偏見は
徐々に和らいできていると言いましたが
現実的にはまだまだ理解が得られていない状況だと思います。
僕自身はゲイではありませんが、特に偏見を持ったことがないので
差別自体、非常に理解に苦しみますが…

各国の映画祭で絶賛された作品ですが
僕はこの作品を手放しで称えることができません。
映し方は確かにリアルですし、役者の演技にも魂を感じましたが
こういう現実が、未だに起こり得るかもしれない世界だからこそ
この作品が生まれたのかなと思うので。
ですが、この作品を見たことは後悔していません。
差別や偏見は醜いということを、改めて実感することができたから。

ふーみん