「ブラジルの自信と誇り」ペレ 伝説の誕生 玉川上水の亀さんの映画レビュー(感想・評価)
ブラジルの自信と誇り
ブラジルの国民的英雄の一人であり、「サッカーの王様」と呼ばれるペレのこの伝記映画は、1950年自国開催のFIFAワールドカップ敗退で自信と誇りを失ったブラジルが、ペレを中心に不死鳥のように蘇り、それらを取り戻していくのを感動的に描いている。
若くして天才と呼ばれたペレが、どのような環境で少年時代を過ごしたのか、そして彼の“本名”も本作で初めて知った。
彼が生まれ育ったのは、サッカーボールもスパイクもないスラム。
元サッカー選手の父、優しい母、彼を慕う弟と妹、そして手作りのボールでサッカーに興じる幼馴染たち、このような温かい家族愛と友情に支えられ、ペレは父と交わしたある“約束”を果たすべく成長していく。
ペレは勿論、天性のサッカーの才は持っているが決して“超人”ではない。
若者らしい挫折や葛藤を抱え、もがいてサッカーに取り組んでいたことが作品から伝わってくる。
そういった内なる困難を乗り越え、彼が本名のエジソン・アランテス・ド・ナシメントから真の意味で“ペレ”になった時、彼本来のサッカーが開花する。
この作品で描かれるサッカーは映像詩のように美しく、これこそがブラジルの歴史と伝統が培ったものだと感じた。
このサッカーの“伝統の技”を「ジンガ」と呼ぶ。
終盤で繰り広げられるサッカーは、ペレをはじめとしたブラジルの人々の思い、それはブラジル人としての自信や誇りといって良いものが一気にサッカーのフィールドに押し寄せてきたみたいで、観ている私も胸が熱くなった。
間もなく開催されるブラジル・リオデジャネイロオリンピック。
南米大陸初のこの大会で、サッカーをはじめとしたスポーツ競技がどのような感動を我々に届けてくれるのか、本作を鑑賞して猶の事、その期待は高まります。