「これは相当に手ごわい。(※おおいにネタをバラしてます)」サード・パーソン 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
これは相当に手ごわい。(※おおいにネタをバラしてます)
はれ?これで終わるの?
何で消えてくの?
結局誰と誰が知り合いなの?
それが、見終えたときの正直な感想だった。
ただそこに退屈さや失望はなかった。むしろ、読み終えた本をあわててめくり返してどこが伏線だったのか確認したくなるような、そんな衝動が、いまある。
残念ながらそれは、もう一度映画を観るしか方法はなく、そのじらされ感こそが、この映画の魅力なんだろうと思える。
公式HPをのぞいて、少し晴れた。
いっぱいヒントが隠されている。予告の中の台詞がすでに答えになっているし、「白いバラの部屋」は実は違う部屋だったことハッとした。「三つの都市の3組の男女」は存在してなくて、むしろ、「スランプに陥った作家と愛人の現在と過去が混在した小説の世界」なのだ。
架空の人物だからこそ、消えていくのだ。
冒頭、タクシーに乗り込むシーンで、なんとかホテルに言ってくれと頼むと言い直される場面があるが、それは、似た名詞について注意せよとのフラグに思える。たぶん、見落としたものはもっとあるはずだ。
「子供に固執する親」が何人も出てくるが、まだどれがどれか、理解し切れていない。たとえばひとつ挙げると、アンナ(オリビア・ワイルド)がまさか父親とそういう関係だったとは衝撃で、それゆえに人の愛し方が歪んでいるのかと腑に落ちる。
そんなアンナが抱えていた秘密を、最新刊の小説(つまり、「彼」を主人公にした日記だ)でばらされたとき、「裏切られた!」と物語るあの眼は絶品だ。
そして、「信頼」の白いドレスを着たアンナが去って行く。他の二人と残像と交差しながら。
何度も「watch me」と囁く声の主は、公園の噴水の縁に腰掛けた少年で、作家とその少年との関係のトラウマが、このストーリの鍵なのだろう。育児を怠り水死したであろう息子か? もしくは、自分自身の過去か?・・・
いやあ、観たあとで、いろんな想像がめぐるめぐる。
パズルを組み立てるというよりも、数式を解く、といったほうが今の感情に近いかもしれない。