劇場公開日 2014年6月20日

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サード・パーソン : 映画評論・批評

2014年6月17日更新

2014年6月20日よりTOHOシネマズ日本橋ほかにてロードショー

有能な脚本家でもある監督のモヤモヤした現実がミステリーとして具現

一見関連のない3つのメロドラマが同時進行。離婚で息子と引き離された元女優の苦悩。異国の地でセクシーな女性と出会ったことから犯罪組織と対峙する中年男の冒険。スランプ中の大作家と野心家の愛人との逢瀬。次第に共通するモチーフが明確となり、3本の糸が手繰り寄せられるように、ひとつの大きな流れが浮かび上がる。緻密にトリックを張り巡らせた構成の妙は長年名脚本家として活躍したハギスの面目躍如だろう。

ただ脚本家としての有能さが、監督としてのハギスの足を引っ張った側面もある。散りばめられたピースからパズルを完成させるミステリー的面白さが、物語のエモーションより目立ってしまっているのだ。完成イメージが最初から見えているせいで脚本から大きく逸脱できないという、監督兼脚本家の陥りがちな罠ともいえる。

しかし幾層にも重なったトリックを掻き分けると、“フィクションが現実の写し絵となる”という本作のテーマが、この映画とハギス自身との関係ともシンクロしていることに気づく。

劇中でリーアム・ニーソンが演じるベテラン作家は、もはや“本当に書きたいもの”を見失っている。ではハギスはどうか? 巨匠イーストウッドとの仕事で数々の栄誉に浴し、初監督作「クラッシュ」はアカデミー賞の作品賞まで獲った。「007」シリーズのリライトに関わるなど商業的にも成功。そのハギスがかくも技工に凝った作品に挑むのは、劇中のニーソンと同様に“本当に書きたいもの”を見失ったからではないか?

実際本作に登場するのは、道に迷い、立ち位置を見つけ直そうともがく男女ばかり。取り返しのつかない後悔、現実から抜け出したい逃避願望、人生の下り坂に差し掛かった諦念。もはやイケイケではいられなくなった人間にまとわりつくモヤモヤを、なんとかフィクションの力で祓いたい! そんな61歳のオッサン、ハギスのこんがらがった心象風景が、そのまま入れ子状のミステリーとして具現化したのではないか?

実際にハギスのインタビュー発言などを当たってみると、笑ってしまうくらいパーソナルなことをダダ漏れにしたと認めている。ハリウッドを制しながらも、真理にたどり着くにはまだまだ遠い迷い子ハギス。つい「お前もか!」と肩を叩きたくなる愚かなオッサンの可愛らしさを感じていただきたい。

村山章

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