劇場公開日 2014年6月20日

  • 予告編を見る

「作家の苦悩」サード・パーソン あまねさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0作家の苦悩

2021年10月7日
Androidアプリから投稿

悲しい

知的

難しい

引き付けられる映画だったけれど、後味はあまりよくなかった、でも内容からしてそれは仕方がないのか。それでも、とにかく、よくできた映画だというのは理解できる。

ひとりの作家が、机に向かっているところから始まり、やはり同じ場所で幕を閉じるので、作家の苦悩を描いているのだと思う。

交錯するストーリーすべてに共通するのは子供と親との関係。
子供に対して充分なことをしてやれてなかったことへの作家自身のトラウマが、三つの作品に折り込まれていく。

けれど、現実逃避して別の幸福を掴む作品は、甘えすぎで生ぬるい。
(これは確かに客観的に観ていまいちだったと思う。単なる<逃げ>じゃないの、と思わせる)

かといって、自分が子供や妻に許される作品、それもどうだろうか
(確かにこんなに上手くいく?って感じがする。結末が性善説すぎて気持ち悪い)

結局は、愛する女性の辛い現実を作品にすることで創作のスランプを脱出する。これは、泥沼の親子関係から女性を救えた、という、贖罪の意味も持ってくる。
(これは興味深いストーリーだった。けれど、モデルの女性が気の毒だった)。

結局、出版できる作品はできあがったが、現実は、まわりの人を傷つけたままだし、自分の過去への整理もきちんとできないままだ。

でも仕方がない、
作家とはそういう苦悩を伴いながら作品を産み出すものなのだ、
彼にとっては、目前にある愛すべきものも、あるときは単なる題材となってしまう。

彼の分裂具合と苦悩は、彼の言動や表情に現れている。わたしなどは、こういう人が現実にいたら「付き合いづらい変わった人」のイメージを持ってしまう。身近な人にそう思われても、彼は、書いていかなければならないのだ。

作家の苦労を、こんなにわかりやすく見せてくれた映画は、わたしは初めてだったので印象に残った。画家のは多少は観てきたけれど。

俳優さんたちひとりひとり個性的で、見ていて飽きることはなかった。構成もユニークで、よくできた映画なんだろう、と思う。

あま・おと