「愛のミステリー?否否、監督から仕掛けられた視聴者へのミステリー」サード・パーソン とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
愛のミステリー?否否、監督から仕掛けられた視聴者へのミステリー
「愛、信頼、裏切り 3つの物語が一つになるとき、 本当に大切なものが見えてくる―」という予告に惹かれて鑑賞。
-本当に大切なもの?-
贖罪と後悔と、切なさと…。
そして言い訳と身勝手さが、チュシャネコのように残る。
う~ん、難解。
3つのストーリーは比較的単純なんですが。でも…、でも…、映画を1つの作品として統合しようとすると、「えっ?!」となってくる。
何度も見直して、Blu-rayやDVDについてくる特典や、レビューを参考にして、自分の中に収めていく物語らしい。
って、監督が「正解はない。自分で答えを見つけてくれ」と仰っているらしいから、特典に頼れないか。
”謎解きミステリー”を期待すると肩透かしを食います。
まあ、愛そのものが永遠にミステリーですよね。
個人的には、
パリの女性が(身近にいたら嫌いなんだけど)可愛くて切なくて、
NYの女性が応援したくなるほど心がかき乱されて切なくて、
ローマの男女が結ばれるシーンがとても魅惑的で、
とシーン、シーンは見応えある場面が多いです。
また、物語とは関係ないけど、
ヨーロッパではロマの人々ってああいう扱いされるのか、とか
パリのホテルのスタッフの対応が温かでうれしくなっちゃう、とか
NYでの親権争いのリアルさ、とか
場面場面が丁寧に作られています。
なのにその珠玉の場面を繋げるとどうしてこうなる?って感じ。
3つの物語に共通のモチーフがあって私のツボ・感動のしどころのはずなんだけど、まったく心が動かない。
贖罪。自分自身への赦しと、妻からの赦し。
自分の告解で、相手がどれほど傷つくかなんて考えない男。
あまりのその無神経さ、なのに、男に都合のいい言葉・展開に、妻まで架空(願望)の人物かと思いたくなる。
それを、身勝手さ・言い訳を、こんなに複雑に描かなきゃならないなんて。
自分自身と向き合うことは、こんなに難しい。
そこからまたドラマが始まるのかと思えば、
霧散して終わってしまう。
マイケルの空ろさだけが残り、
予告で「ミステリー」を期待した身には裏切られた感と放り出された感で映画は終わる。
きっと何度も見直して細かい所まで気を配って咀嚼しないとダメなんだろうなあ。
そういう噛みごたえのある映画をお好みの方向きの映画です。