劇場公開日 2014年5月17日

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花と蛇 ZERO : インタビュー

2014年5月16日更新
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天乃舞衣子×濱田のり子×桜木梨奈「花と蛇 ZERO」でさらけ出した魂

主演女優の座をつかむことは大きなチャンスであると同時に、相応の重圧と責任を伴う。そのすべてを背負い、文字通り身も心も裸になって人気シリーズの最新作「花と蛇 ZERO」の官能的な世界を彩ったのが天乃舞衣子、濱田のり子、桜木梨奈だ。三者三様の性の目覚めを体現し、3人同時に縛られつるされるクライマックスの“3人連縛”では神々しささえ漂わせる。3人の潔い言動からは、体当たりで荒行を乗り越えた自負が感じ取れる。こちらは“縛りなし”の奔放トークをお楽しみいただきたい。(取材・文/鈴木元、写真/堀弥生)

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天乃と桜木はオーディションで大役を射止めたが、原作は団鬼六氏のSM官能小説。脱ぐことはもちろん、緊縛があるという前提での挑戦だった。天乃は、監禁少女の調教を配信する闇サイト事件を追う刑事・美咲役で、現場にいた妹を逃がしたことを知った何者かに脅迫され性の奴隷となっていく。

「『花と蛇』は見ていた作品だったし、橋本一監督であるということが魅力的でした。監督の『極道の妻たち 情炎』がとても好きだったので、ぜひこの作品で全力投球したい、と思いました。決まった時は正直、ビックリして、私でいいのかなというプレッシャーはありましたが、美咲の設定がすごく面白いし(主役が)3人なので心強かったですね」

一方の桜木は、原作小説を持っているほどのツワモノで、しかも闇サイトを見て自らの性癖を見いだしていく主婦・瑠璃という、自身が演じた役を決まるまで知らなかったというのだ。

「実は別の役で受けに行って、台本は美咲の部分も読んだんです。主演という響きは素敵で、やるなら主演という気持ちはいつも持っているけれど、別にどっちでもないなと思ったのできっと落ちると思っていました。そうしたら瑠璃に決まって、こんな子がいたのかって(笑)。それで瑠璃に愛着を持って読んだらこの子は私だと思って、そういう気持ちで臨みました」

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対するベテランの濱田は何人かの候補の中から、夫の借金のかたに監禁され辱めを受ける静子役に決定。最近では杉本彩、小向美奈子らが演じた「花と蛇」シリーズのミューズである。

「3人というのが面白くて、実際に台本を読んだらサスペンスの要素もかなりあってすごく面白い。それでやらせていただきたいなと。でも受け継ぐという固定観念はなく、とにかく一生懸命、心中するつもりでやるしかないですよ。だって比較はされるじゃないですか。そう考えたら落ち込んじゃうから。本当に気合い。そんな感じです」

役に懸ける思いはそれぞれだが、やると決めたら一切の迷いは吹っ切れるのだろうか。そう思わせたのが、天乃と桜木が撮影前に行った体験緊縛なるもの。荒縄で縛られ、そしてつるされる。絶対に痛みやつらさがあるだろうと想像していたが、2人の感想は予期していなかったもので、濱田も驚くことしきりだ。

天乃「人生初でしたが、フワッと浮く感覚がなんていうか…」
 桜木「遊園地の乗り物」
 天乃「そう、アトラクションのような」
 桜木「不思議~。でも楽しい、みたいな」
 濱田「えーっ、楽しいんだ?」
 天乃「すごく楽しかったんですよ」
 桜木「体験した日が2人一緒だったんですよ。(天乃が)先につられていて、わあ、きれい、早くつられたいって」
 天乃「あの日は、2人で興奮していましたね」

なんとも大胆というか、実に開けっ広げだ。加えて天乃には衆人環視の下で玩具を使った自慰、桜木には自縛での屋外プレイといった“濡れ場”も多々あるが、気持ちが入っているからこそエロティシズムがスクリーンからにじみ出てくる。そんな2人に、ほぼ監禁されていた濱田も賛辞を惜しまない。

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「梨奈ちゃんはムードメーカーで楽しい空気を持ってきてくれるし、すごく役に入っていた。舞衣ちゃんはあまり発言はしないけれど、現場に行くとリハーサルから素っ裸になってやっている。さすがだなって思いました」

3人それぞれにストーリーがあるため、撮影はほとんどが別々。顔を合わせても体調を気遣う会話があるくらいだったそうだが、橋本監督が「やっと3人そろった」というクライマックスの緊縛ショーでついに三位一体の見せ場を迎える。SM映画史(というものがあるかは不明だが)初となる3人が同時につるされる“3人連縛”だ。さすがにここは気力、体力勝負を強いられたようだ。

天乃「他の人が縛られているのを待っているのが、けっこう大変でしたね」
 濱田「監督は『よく逃亡者が出なかったと思う』って言っていましたけれど、逃げられないんですよ、縛られているから」
 桜木「1時間以上、関節を固められている状態だったので逃げようがない。つられている時の方が楽だった」
 天乃「上げて下げても大変だったし、けっこう寒かったですよね。毛布でくるんでもらったりしたけれど、本番は水をかけられたり、ずーっと縛られているからジンジンしたり手が動かなくなったり。そうなるとスタッフの方がマッサージしてくれて、そういう意味でも本当に助けられながらでした」

ムチで打たれ、ロウソクをたらされ、そして絶頂に達する。濱田が「アートの世界」と評するのもうなずける、エロスを超越した壮絶なシーンだ。当然、縛った痕が残ったり傷を負うこともあったそうで、精神的にも肉体的にも過酷な現場を乗り切ったことで、大きな糧を得たことは3人の充実感みなぎる笑顔から伝わってくる。

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濱田「実際に痛くて本当に涙が出てきちゃったりということが何回もあったから、もうどんなに痛いとか寒いとかがあってもOKと思いましたね」
 桜木「もう怖いもんなしですね。私自身は自縛のシーンが多かったので、もうちょっと緊縛されたいなって気持ちもあるんですけれど、この現場に縛られていたいっていう思いもあります」
 天乃「一生懸命だっただけで、もう裸になることはあまり考えられない状態で…。(撮影終了時は)緊縛から解放されたような感じでしたけれど、今は張り詰めた空気に戻りたいという気持ちがあります。体にまだ毒が残っているような感じですね」

そして5月17日に公開が迫り、特に若手2人は期待にますます胸を高鳴らせる。

天乃「やっとここまできたという思いがすごくあります」
桜木「銀座の丸の内TOEIに看板が出ていて、あんなに大きく自分の顔が張られた体験は初めてだったので、それにまず感動。この感動をこの世界をお客さんにも一緒に味わってもらいたいです」

その表情には、どこか艶っぽさもにじみ思わずドキッとしてしまう。濱田も「絶対に大画面で見ていただきたい」と言葉に力を込める。脱ぎ捨てたのは衣装だけではない。魂までをもさらけ出してひとつの殻を打ち破った“3本の矢”は、さらに自信というスピードを増し飛躍していくに違いない。

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