「大人は皆。」ソロモンの偽証 前篇・事件 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
大人は皆。
まるで「中学生日記」か?と思わせる冒頭のやりとりには苦笑したが、
その後の展開は目を見張るものがあった。もちろん原作が面白いの
だろうが(またも未読)、その膨大な資料をこの映画でどう魅せるか、
そういった試みもファンには興味津々。オーディションで選ばれた
新鋭たちが生徒役で熱演を見せるが、やはり主役の藤野涼子が今後
どんな成長を遂げるのかが一番楽しみだ。「口先だけの偽善者」だと
死亡した同級生に罵られ自殺まで考えた主人公が裁判で検事となる。
私は彼女が後半に訴えた「大人は私達を守ってくれるけど私達の話を
聞いてはくれない」が、あまりにもっとも過ぎて胸にズキンときた。
昨今の陰湿で残虐な事件も、今作で描かれている生徒達の心層の闇も、
どうして傍にいる大人が気付いてやれなかったか、話を聞いてやれな
かったのか、と思えるものばかり。当時では涼子が訴えを仄めかすと、
体罰のビンタが飛んでくる。いいから子供は黙っていろ!とばかりに。
イジメやDVが壮絶に描かれているのもポイントで、犯人と称される
生徒が父親から壮絶な暴力に晒されている現場を容赦なく見せ、なぜ
少年が女子生徒に酷い暴力を振うのかを生き写しのように見せている。
この暴威にどう立ち向かい、どう対処するのかを後篇に期待したい。
後篇で真相が明らかになるのだろうが、前篇でもその片鱗はかすかに
読みとれる。死亡した生徒の身辺がまるで語られないことや、他校の
生徒が登場してなぜか弁護士を希望する場面など、疑問に思える点が
数多い。教師や警察の思惑が見えてくるのもおそらく後篇なのだろう。
登場する人物其々がいかにもな面構えでスタンスの分かり易さが絶妙。
(あー楽しみな後篇。大人になれば、みんな嘘に塗れて生きるからねぇ)