「多田と行天以外は話を進めるためだけの単なる置物、話の展開が雑過ぎる作品。」まほろ駅前狂騒曲 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)
多田と行天以外は話を進めるためだけの単なる置物、話の展開が雑過ぎる作品。
酷かった。
本当に酷かった。
兎にも角にも話の展開が雑過ぎる。
限られた時間の中で話を詰め込むため展開の省略/改変がある点は理解出来なくはないですが。
原作の嫌な摘み食い。
何となく「まほろ駅前狂騒曲」が分かった気になるダイジェスト作品。
その過程で原作の良い部分が全て、跡形も無く粉砕してました。
原作は三浦しをんの同名小説「まほろ駅前狂騒曲」。
初のシリーズ長編作品。
題名の通り前作2作で掘り下げたまほろの魅力的な面々を前提に、多面的に賑々しく広がる話。
それが終盤一気に集約される展開は爽快感があります。
特筆すべきは多田と行天の成長。
1作目で自身の哀しみをキチンと認めることが出来た二人。
3作目である本作では哀しみと向き合い一歩を踏み出す。
その姿にグッときました。
で、これを原作とした映画本作。
…原作の良さが何一つ無くなった糞作品に。
理由は明白。
作り手側が原作の良い点を理解せず。
瑛太と松田龍平、この二人の遣り取りがあれば観客が喜ぶと思っているから。
その他の面々は彼等が交流をする上での単なる記号。
極端に言えば二人の交流を支援/邪魔する置物。
ハルちゃんも、星君も、亜沙子さんも、凪子さんも、曾根田の婆さんも。
その他諸々含めて全てが空虚で話を無理矢理進めるためだけの存在。
本来は魅力的な彼等の、観るに堪えない雑な扱いに中盤以降は憤りしか感じませんでした。
映画版やテレビ版で馴染みの面々をチラッと出せば観客が喜ぶと思う浅はかさに心底ウンザリ。
特にハルちゃんとの交流。
軸となるはずの行天と娘であるハルちゃんの交流。
本作では驚くほどに淡泊。というか少な過ぎ。
ハルちゃん自体の出番が少ないこともあり何故彼女が多田に、行天に懐いているのか理解不能。
行天とハルちゃんの初めての二人きり演出も雑だったし、翌朝の遣り取りも原作の方が数倍良かった。
丁寧に過程を描いたからこそ終盤の展開にもグッときた原作に対して。
本作は省略し過ぎ、というか交流がほぼ無く終盤の展開は違和感しか。
途中で2.30分程度意識を失っていたのではと思うほどに唐突な展開に感じました。
また亜沙子さんとの交流も酷かった。
事有る毎にキッチンに行く多田の姿は描かれておらず。
二人の関係性が動き出す場面は唐突さが否めない。
加えて次作以降に展開を残したかったのか、嫌な改変もされており。
意味もなく後味の悪い作りになっていました。
多田と行天以外は話を進めるためだけの単なる置物と化した本作。
終盤のバス内で起きるドタバタは噴飯モノ。
展開は呑み込み難い上に、こちらも意味もなく嫌な後味。
思い付きで話を進めているとしか思えないテキトウさに反吐が出ました。
確かに多田と行天の遣り取りは配役の妙もあり面白い。
観ていて楽しいですが…楽しさは一瞬。
話の展開は原作が数倍面白いので、原作を読んで脳内で実写化した方が良いと思います。
瑛太と松田龍平の仲睦まじい姿を観れれば満足という方のみ。
オススメです。