劇場公開日 2014年10月18日

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「やっぱり『傷だらけの天使』と比較してしまう自分がいる」まほろ駅前狂騒曲 全竜(3代目)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0やっぱり『傷だらけの天使』と比較してしまう自分がいる

2016年10月22日
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鑑賞方法:映画館

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単純

まほろ駅前にて便利屋を営む多田(瑛太)&行天(松田龍平)の凸凹コンビが、無理矢理背負い込んだ仕事に振り回される奮闘を描いた人気シリーズの劇場版第2弾。

不器用なまでに純情な二人組が事件を追っては追われる人間模様は、『傷だらけの天使』の世界観を継承していると、昭和テレビドラマオタクの精神をくすぐられた私は、幸か不幸か原作も映画もテレビドラマも全部観ている。

『モテキ!』の大根仁が手掛けた相手を皮肉るシニカルギャグがテンポ良く炸裂するテレビドラマシリーズが、深夜帯にマッチしていて、一番好きなのだが(特にターゲット宅にて指輪を紛失させるエピソードが傑作)、前作に引き続き、大森立嗣が描く、過去の傷を未だ引きずる心の闇を静かに晒していく哀愁も嫌いではない。

離ればなれの行天の娘を暫く預かる羽目となった事から二人の家族の価値観や生い立ちが語られる人情噺と、
片や、腐れ縁ゆえ裏社会を仕切るヤクザVS新興宗教の抗争に巻き込まれるサスペンスがシンクロし、まほろの町の表裏を垣間見せる構造は相変わらず絶妙な面白味を築いている。

また、事態が深刻な状況に傾くと、まほろキッチンのオーナー(真木よう子)や、路線バスのスケジュールに異常なまでの執念を燃やす老人(麿赤兒)、そして、ヤバい事情を隠し持つシンちゃん(松尾スズキ)etc. etc.
ドラマでお馴染みの面々が、独特のスパイスで緊張感に味付けを施す賑やかさも、まほろならではの特徴と云えよう。

ただ、その慌ただしさは深夜ドラマの枠で、じっくり進めた方が安心して面白がれたんじゃないかな?
チョイと騒々しすぎてバスに乗り込む後半が強引やったねと、チャチャを入れるのは、身の程知らずだろうか?

多田、行天、それぞれの父親としての成長をもっと純粋に追っていく事に映画化の意義が有ったように察する。

特に、行天演ずる松田龍平のキャラクターは、ほぼ同時期にスタートした『探偵はBAR にいる』シリーズの高田とモロにカブるため、どのエピソードだったのか?混乱するので性分が悪い。

ブッ飛んだ高嶋政伸と対決したのは、どっちやったっけ?
松尾スズキとロシアンルーレットやるのは、どっちやったっけ?
etc. etc.

そのため、事前に復習をして、物語を仕分ける必要性が有る。

つまり、観る方も、演る方も、やたら面倒臭くて、慌ただしい。

そんな映画なのである。

では、最後に短歌を一首

『向き合えば 事情育む 傷を笑む 授けし春や 遠く信じて』
by全竜

全竜(3代目)