「何とも評価しにくい」トランセンデンス Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
何とも評価しにくい
宣伝文句にクリストファー・ノーランの名を借りるのはいかがなものか。必然的に期待をしてしまうではないか。特に見るからに小難しそうなテーマの本作ならば尚更だ。案の定、結論を言ってしまうと、期待しすぎの一言だった。それは、決して大成功とまでは行かなかった興行面を見ても一目瞭然だろう。人間の脳内データをスキャンして、体は死んでもコンピュータ上で生きる事が出来るなんて、生物という定義の根底を覆してしまう恐ろしい発想だが、近い将来実現するのではないかとも思ってしまうのが怖いところだ。
テーマこそ難しそうで中々鑑賞しないでいる人も多いかも知れないが、意外とストーリーは小難しい事は無く、比較的理解しやすい世界観であり、技術革新の偉大さや恐ろしさをとっつきやすいストーリーで描いている。エンターテイメント要素も忘れることなく、後半の展開はまさにSF的思想に基づく構成になっていると思う。
何故ジョニー・デップに声がかかったのか不明だが、中盤はコンピュータ上での声のみになるため、ファンはやきもきするだろう。アクション等の映像的に盛り上がりを見せる展開は用意されておらず、あまり起伏なく一本調子で進んでいく物語がやや不満か。テーマがテーマだけに難しいだろうが、SF作品と語る上ではもう少し必要な要素だったのではないか。心を持つ人間と、コマンド入力のコンピュータ(機械)が交わる事で起きる不足の事態も、根本は平和や愛から出来ており、最後のシーンが特にそれを物語っている様に感じる。コンピュータ化やAIが進む今、この様な未来世界に一石を投じる作品としては、完成度の高い作品だろう。