「真面目が人間の基本だ。」たまこラブストーリー Takehiroさんの映画レビュー(感想・評価)
真面目が人間の基本だ。
おっさんの感想で申し訳ないけどよお。たまごじゃなくてたまこだったし、最初まるで違う話なのかと思ったら、『男はつらいよ』のオープニングのような感じだったようだ。ネットで少しだけ調べたら前年にテレビで12話放映した背景があると言う。だがこの劇場版だけでも独立して観られるらしい。日本映画専門チャンネルはこのようなパターンをこの夏休みに幾つか放映した。『劇場版あの日みた花の名前を僕達はまだ知らない』もそうだった。こちらは劇場版と付いているからそうした経緯がわかりやすかった。◆向かいの家が同業の店(餅屋)でそこの幼馴染の男女が成長して高校生になり、男のほうが女のほうを女性として好きになったのに気付いてしまい・・・。という、すぐに思い出すのは『タッチ』みたいな設定だが、テレビドラマにせよ他にも幾つもあったと思う。◆「そうなんだ。たまこにちゃんと言わなきゃ伝わらないんだ」と男がつぶやく場面があるが、そうなんだけどなかなか言えないものだ。そして女のほうは無邪気で気付かない。◆こうしたアニメを観る人々は健全な精神を持った人がほとんどだと想像するので頼もしいし、つい3、4年前の作品であった。◆脇役の女も相当可愛いのに本命では無い事からの複雑な心理。男のほうにも友人の仲間たちがいる。そして馬鹿な奴らである。◆ところが男が告白してしまったばかりに女は驚く。ここがアニメだが、浅瀬に落ちてしまう。そこでなぜか「かたじけねえ。お先に失礼させてござんす」みたいな言葉を発して逃げてしまうが、こういうのが今風なのかも知れねえ。◆カーテンを閉めるシーンは偶然にも今日のNHK朝ドラ『ひよっこ』でもしていたが、こちらは三男を巡って、米子と時子が出会い、言い合うシーンの日であった。妙にリンクしている。真面目な人達こそ本当に恋愛がある。実際の今日の日本は真面目な人がいなくなってしまったので、恋愛はしないほうが良いのが本当のところだ。恋愛ゲームで経験人数が五人だ十人だ三十人だとなって行き、崩壊して行く。一人を生涯愛せるのが、その人を見つけられた人が本当の恋愛をした人なのだった。どんなに美しくとも別れた場合は失敗の恋愛もどきだろう。偽物だったのだ。結婚しようが子供が出来ようが。偽物だったのさ。それだけ厳しくなければ本当はわからないのだ。こんな本当の頃を言うと怒りだす人もいるだろう。図星だからだ。◆バトン部には理論家女子などもいて面白い。◆告白後は女も当然意識してしまい、不安定となる。不安定で全うである。◆先生がオスマン帝国の説明をしている授業中に窓際で空を見上げて幼児期の事を思い出すたまこ。◆商店街を歩いているとおじさんやおばさんたちがお帰りたまちゃんと言ってくれる。商店街というのもこの作品の背景だな。◆そしたらやたら告白した男とバッタリ出会ってしまうたまこ。男の名前が餅屋でもち蔵(笑)。商店街の人達はみんないつも通りだが、たまこともち蔵の関係が違ってしまった。言葉の力だ。力の生ずる言葉も実際はあるのだった。◆もち蔵が東京の大学に行くと言っているのだから舞台は東京では無い。◆しかしこんなに困ってしまうのなら、昔のように「いいなづけ」でもいる時代のほうがすっきりしている気もするし、それで助かる人も多かろう。◆最近はアニメのほうが露骨なセックスシーンなど無かったりと、アニメのほうが高級な時代になっているかも知れない。だからアニメを観ているような人々のほうが高級な精神なのかも知れない。男女は難しい。少し間違うと汚くなってしまう関係だから。◆高校生なんて時代は思考の成長のスピードもてんでばらばらで難しい時期だ。間違っているほうが影響力を持ってしまうとつるんで汚い方向に走ってしまったりする。しかしその逆がある。確執もあったりする。◆そして無邪気な小学生か中学生くらいの妹が付いていたりする。◆たまこは、お父さんがお母さんに告白した時に関係した曲をどうして聴いているのと妹に尋ねられたりする。◆男はいきなりすぎたかなとため息をついている。そしたらカフェのマスターが若さとは急ぐこと。砂糖が溶けるのも待てないくらいとか。後悔の苦さは何かをした証。一つ一つ味わいたい。とか、ダバダーダバダバダバダーみたいなセリフを言う。気持ちいい。◆アニメ脚本家の吉田玲子氏が私と年齢的に同学年とは。背景が垣間見られるとちょっと不思議な風にも感じたりする。同学年も至るところで頑張っている。最近も『ひよっこ』のみね子の父さんとすずふり亭のマスターは同学年だった。◆告白したされたの二人を心配するたまこの友人たちも良い。◆ぎこちない二人。このドラマの場合は幼馴染。幼児期の男の優しさを不意に思い出す。◆二人を結び付けようと画策するたまこの友人たち。ここは喜劇的でさえある。◆本当はもち蔵が好きだったが「見直した」で済ませるかっこいいような女も登場する。たまことも友達だ。だがそういう子には別の素晴らしい男が後に現れるものだ。◆そして萌えのバトントワリングシーンとなる。◆ねたばれを書きすぎだ。◆アニメ監督も女性だが、おそらく同世代なのか。脚本家のほうは、40代後半でこうした良い意味で健全な青春ものを書けるのが素晴らしいと思った。◆他にも微妙な心理描写が次々と出る。◆こうした良い人ばかりの映画が主流であるほうが結果的には良いのだと思う。◆ただ自由乗車券なら良いとしても、指定席だったとしたら新幹線に迷惑をかけてはいけなかったとは思う。ただ私は新幹線の事を詳しく知らない。◆終わり方もこれで良い。◆贅沢な時間だった。ありがとう。