「"欠落部分"を"想い"が埋める」THE LAST NARUTO THE MOVIE 平田 一さんの映画レビュー(感想・評価)
"欠落部分"を"想い"が埋める
"愛は人をもっとも弱くする"
上の文章は前作の劇場版『ROAD TO NINJA』のうちはマダラ(まだ"オビト"だと明かしてなかった頃ですね)の台詞ですが、事前にこの台詞知っておくと、今回の作品をもっと楽しめますよ。何しろ今回は"恋愛"ですから(何か『寄生獣』の序文レビューに自分でも分かるぐらい似てしまいましたが)。
あとこれから見る人に注目してほしいのが、主人公の"うずまきナルト"ですよ。それは今回の作品に別の"テーマ"を感じたからです。
それはナルトの"欠落背景"です。原作を読んでる方はご存じですが、ナルトは悪戯という手段を使って、自己の証明をし続けた少年で、それが今のナルトを形成してるんですよね。ただそれが一方で"欠落"の理由にもなってると思ってます。実はtwitterでも感想書いたんですが、ナルトはどこか『ランボー』と似てるんですよね(当然ですがスタローンの映画です)。ランボーは"戦う"ことですら生きることができない背景、ナルトも"悪戯"をすることでしか自己証明ができなかった背景、どちらも"人に蔑まれ""選択肢を見失っている"共通があって、"愛する"ことも"愛される"ことも"幸せ"を望むことも知らない。否定意見もあるでしょうが、僕はそう感じたんですよね。
だから本作のポイントは選択肢に"気付くこと"と、"愛すること"を望んでも良い、ですね。そのきっかけをくれたのが、他ならないヒナタでしたから。
これはファン視点の話ですが、ナルトはヒナタに"自分"を見たんだと思います。(無意識に)自分に自信が持てないところとか、変わりたいのに術が分からないところとか、抱えている"自分の弱さ"がどこか似ていると感じたのかも。だからヒナタを助けようとしたのは、自己否定とも言えますし、背けたくなかったとも言えますね。そして中忍試験編でネジと戦うヒナタの姿に感情を露にするところや彼女の強さをどこまでも信じる姿、ネジと本選で戦う前にヒナタへ見せたナルトの"不安"とか、ナルトはヒナタといるときだけ、"弱さ"を打ち明けているんですよね。だからナルトとヒナタの関係は他のキャラとは明らかに違ってて、それが原作を面白くしてるんです。それに僕はナルヒナ派で二人が結ばれてほしいって思ってますから(笑)
そして今回の完結編で最初の文章が意味合いを持ちます。ナルトは初めて踏み込んだ"愛"に翻弄されて弱くなります。"愛は人を最も弱くする"、確かにそうかもしれません。だけど先へ進まなければ、自分の弱さを受け入れることも、愛を得ることもできないわけです。だからどうしようもない"自分の弱さ"をシカマルやサクラにさらけ出せたのは、弱さを受け入れた証ですし、ヒナタと向き合うことができたわけです。
それにしても最後の"キスシーン"は見てて恥ずかしくなりましたが(まあ、他にも恥ずかしいところはありましたが)、その前の"一緒に手を繋いで走る"シーンは涙が出そうになりましたね。しかもそこでもう一つ"仕掛け"を施すんですから、本当『NARUTO』は侮れないです。
大分長くなりましたが、とにかく僕は最高でした!というより凄く濃密な時間でした。来年のスピンオフも気になります。読んでくださった方、ありがとうございました。
追記:さっきもう一回見に行きました。やっぱり最高の完結編でした!
追記2:4回も見たのに全く変わらず、作品はやっぱり面白かった!それにしてもこの作品、DCコミックの新作映画『Batman v Superman: Dawn of Justice』の役割に似てると思うのは僕だけ?