劇場公開日 2014年7月19日

「ジブリの怪」思い出のマーニー ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5ジブリの怪

2023年1月14日
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解せぬ。。
申し訳ないけど、ここに出てくる登場人物はRPGの村人みたい。内側に何らかの動機とか怒りとか悲しみを持ってるように見えないんだよ。
作画はすごーく豪華だけど(見た目は地味だけど)、アングルとかが妙に冷淡。なんでこんな客観的な視点なの。ぜんぜん心を掴まれない。むしろ積極的に距離を取ってくるタイプの画面(最近の演出家には多い)。

ラスト間際になっても「彼女」ともう会えなくてさみしいとか、二度と戻らない時間が切ないとか、そういう本来この作品が呼び起こすはずの感情がビタイチ起こらない…
ただ「お話」を消化するためのご都合でみんな行動してるって感じ。
ボートの舳先に立つくだりだって、位置づけ的にはすごくキラキラしたいい場面のはずなのに、すごーく平熱。
かといって薄気味悪い不穏さがあるとかでもないし…

パーティは「シャイニング」とか、サイロは「めまい」みたいとか、そういうシチュエーションの類似性はあるのに、それらにあった現実が揺らぐような幻惑感はまるでなし…いいけども。

ネタ的にラストのオチで回収するタイプの構造になっているからって、そこに至る過程が退屈でもいいってことにはならない。むしろそこが本題でしょう。
こんなことになるなら、そのネタもっと早くに匂わしてもよかったんじゃない?

そもそも家族との関係に悩んでるはずなのに、家族の存在感がまるでない。あんないい家族と、どうしてなの?みたいな違和感もない、つまり引きがない。
サービス精神がまるでないんだよな。

ホラーとかサスペンスの味付けも可能な設定だと思うけど、そういうジャンルものにも興味なさそう。かといってキャラクターたちの描写も表面的で、展開に奉仕するための操り人形みたい。それでゲームの村人みたいに見えるというわけ。

冒頭から、心を閉ざして絵の中に逃げ込んでいる(まあわかる)→親戚の家に預けられて不本意(に見えないけどたぶんそう)→親戚の人と普通に会話(ん?)→初めて見た洋館の近くに行くためにわざわざ靴脱いで水に入る(元気じゃん…?)、とどんどん主人公のキャラクターを見失ってしまう。
周囲に心は閉ざしてるがあの特別な館には魅入られてしまったというなら、それまでの描写をもっとはっきり周囲に興味がないように強調しておかないと観てるこっちには伝わらない。
そういうタメがなくて、ずーっと同じ温度、テンションでストーリーだけがボートのように滑っていく。

開始30分、いろんな場面があって、いろんなことも起こってるはずなのに、主人公のことがまるでわからない。
そして重要なキャラクターである「おばちゃん」と主人公の場面がなさすきで、ほとんど空気なのも痛い。
透明感ありすぎる作風…?日ごろ味つけの濃いジャンクフードばかり食べてるせいか、上品すぎてほとんど水みたい。せめてポカリ程度の味は欲しいし、肝心なことはセリフじゃなく絵で見せてほしいな。

申し訳ないけど、いくら監督としてのキャリアが浅いとはいえ、これだけのお膳立てを与えられてる以上、一定の批判は免れないと思う。でも結局は「ゲド戦記」と同じくプロデューサーの問題なんだろうな。
ちなみに脚本家の1人もゲド戦記と同じ人。うーん。。

さらに申し訳ないけどこれなら口出ししたくてうずうずしてた宮崎駿の「スパイが跋扈してた戦前(?)の軽井沢が舞台」というアイデアをいただいた方がまだよかったんじゃないかと思う。
若い監督にはハードル高いでしょうし、純度の高い女子ムービーには無用な雑味だったんでしょうけど。。
あといつの間にか監督を乗っ取られるリスクもあるし(前科あり)。

今でも不思議なのは、鈴木プロデューサーはなんで監督として確実に適性のある高坂希太郎(「若おかみは小学生!」)とか山下明彦(「透明人間」)とかに監督させなかったんだろうっていうこと。まじで謎。むしろ怪。

ipxqi