「広末涼子」想いのこし 西国くんさんの映画レビュー(感想・評価)
広末涼子
自分の人生が突然終わってしまったら、そして、それを奪ったのがあんなサイテーな男だったら、そりゃ浮かばれないよねぇ。原作は未読ですが、平川監督にとっては、「ツナグ」同様、死者との交信を描いた作品となりました。
突然人生を奪われた四人の想いをかなえてあげて成仏させるだけならば、予定調和のただのお涙ちょうだい映画となりますが、奪った張本人が悪人ではなく、所謂サイテー男で、映画自体をコメディータッチにしたのが良かったのではないでしょうか。「ささらさや」がどちらかというと、残された方の視点に立っているのに、こちらは逝ってしまった人の想いに寄り添っているのも比較すると面白いと思います。それに、広末の息子が母からの最後の電話に出なかったことを後悔しているというのには、すごく共感が持てました。些細なことですけど、こんなもんなんですね。
一方、逝ってしまった人の想いの方も、本当にささやかな物でした。それをこのサイテー男が一つずつかなえてやるワケです。金のためなら女装もいとわずに。。。でも、その願いが叶うということは、残された人の方にも逝ってしまった人への想いが残っていからだと、いつしか気がつくわけですよ。そしてそれは、それぞれが一生懸命生きてきた証でもあるわけです。四人は成仏して姿形はなくなってしまいますが、いつまでも生きている人の心には残っていきます。結婚できなかった婚約者にも、野球部のメンバーにも、消防署の後輩にも、そして最愛の息子にも。これが肝ですね。
その上で、すべての話が完結して、最後の最後に、やっぱりサイテー男は、サイテーだぁ、と笑わせてくれるのもいいですね。彼の本質は全く変わらず、これからもたくましく生きていくのでしょう。でも、それでいいんですよね。
サイテー男は岡田将生でした。