劇場公開日 2014年9月27日

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「対の連なり・光と影が、かけがえのない物語を紡ぎ出す」ファーナス 訣別の朝 cmaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5対の連なり・光と影が、かけがえのない物語を紡ぎ出す

2014年11月14日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

知的

大切なもの全てを奪われながらも、筋を貫く男の話。
文字にすると、身も蓋もない。しかし、これが実に至福の2時間弱。とにかく、映像が深い。そして、悲しいほどに美しい。
この映画を面白くしているのは、似て非なる、AとBの対比だ。堅実な兄と地に足がつかない弟、看る者と看られる者、鉄鋼所での仕事と刑務所での作業、収監された兄と戦地へ赴く弟、愛を乞う者と拒む者…。様々なAとBが重なり、すれ違い、入れ替わり、物語を紡いでいく。刑務所で語らう兄弟は、どちらが収監されたのかわからないほどに囚われている。愛を乞う者も拒む者は、それぞれに代え難い悲しみに沈む。また、繰り返し描かれる、車の運転席と助手席という横並びの関係も印象的だ。そして、血みどろの拳闘と清廉な鹿狩りの並行展開が、物語を第一の高みへグイグイと導いていく。
後半は、フレームの連なり、光と影の対比が忘れ難い。小さな窓から覗きこむようにカメラが展開し、遠景から物語を捉える。あたかも、安易な共感や同情を拒むように。全てを飲み込むような重い夜が、じわじわと明けていく。穏やかな光に包まれた朝に、物語は第二の高みに至る。
そして、再び闇。漆黒の中から、うつむいた彼の姿が、輪郭のみ浮かび上がる。抑えた感情があふれ出すような、静かな凄み。何も見えないはずの暗闇を、ひたすら凝視した。これほどに納得のいくラストシーンは、なかなかお目にかかれない。
今年の映画…を思うこの時期、幸運にも忘れ難い一本に出会えた。

cma