劇場公開日 2014年11月15日

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神さまの言うとおり : インタビュー

2014年11月14日更新
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福士蒼汰&山崎紘菜の財産となった三池崇史からの金言

ある日突然、日常のなかで生死をかけたサバイバルゲームが始まったら、人はどうするだろう──。三池崇史監督の最新作「神さまの言うとおり」は、ごく普通の高校生たちの前に謎のダルマが現れ、命懸けの“ダルマさんが転んだ”のゲームで始まる。何が目的なのか、誰が仕掛けたものなのか、そこに理由はなく、ただ理不尽なゲームに挑んでいく、生き残るためにゲームをクリアしていく、そんなサバイバルな青春映画だ。その恐怖の世界に身を投じたのは、福士蒼汰と山崎紘菜。(取材・文/新谷里映、写真/堀弥生)

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福士は主人公の高畑瞬、山崎はヒロインの秋元いちかとして、5つのゲームのなかでぞれぞれの役を生きたわけだが、俳優としての挑戦は5つの見えない敵を相手にすることだった。目は充血し顔中に金具が留められている不気味なダルマ、巨大な招き猫、4体のコケシ、木彫りのようなシロクマ、古びた大中小のマトリョーシカ──そのいずれも3DCGとして描かれるため、福士は「ものすごく想像力の必要な現場でした」と振り返る。特にシロクマとマトリョーシカのステージは、原作コミックにはない映画オリジナルの脚本。より一層の想像力が必要とされた。

「イメージを作って、それを頭のなかで投影しながら演じました。あそこにマトリョーシカがいる! ちっぽけだけどアイツらが言っていることに僕はビビっているんだ、という感じです。いつもは役や現場を想定して準備をしていくんですが、今回は敢えて何もしないという選択をしたんです。というのは、実際の現場で目の前のキャラクターをどうイメージできるか、イメージしたものに対してどうリアクションするか、何よりもリアクションを大切にしたかったから」。新しい試みによって新たな演技方法を手にした21歳。初めて主役を演じた「仮面ライダーフォーゼ」シリーズをはじめ、映画のフィルモグラフィーのほとんどが主役であることは、福士の作品ごとの挑戦の積み重ねだと想像がつく。

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一方、今年20歳を迎えた山崎は、第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞してデビューとなった期待の新人女優。三池監督作品「悪の教典」にも出演しているが、本格的なヒロインを演じるのは今回が初となる。山崎に課せられたのは、グリーンバックでの撮影という未知の領域でさまざまな“恐怖”を演じ分けること。女優として「自信につながった」と、三池監督の演出方法を語る。

「恐いけど楽しかったり、恐いなかに怒りが含まれていたり、恐くて興奮していたり、こんなにも恐怖の種類ってあるんだなって勉強になりました。なかでも印象深く残っているのは、悲鳴の演出。コケシに追いかけられて必死に逃げるシーンで、いちかは悲鳴を上げるんです。そのとき監督に『それは逃げている悲鳴じゃなくて、切りつけられて痛いときの悲鳴。このシーンは恐いものを見たときの悲鳴がほしいんです』と言われて。悲鳴にも種類があるのか! と発見でした。想像力を鍛えられた現場でした」

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また、個々の想像力だけでなく、生き残ったメンバ−全員の想像力をひとつにしなければ恐怖が成立しない難しいシーンとなったのがシロクマのステージだ。福士は「生死をかけたゲームを何とかしてクリアしようとする1人1人の必死感、全員が息を合わせて敵に対する恐怖感、それを同時に演じなければならなくて大変でした」と、注目してほしいシーンとして挙げている。

見えない相手を前に死と隣り合わせの恐怖を演じ、演技の幅を広げた福士と山崎。2人が得たものはそれだけではなく、これからの役者人生の糧となるであろう“言葉”を三池監督から受け取っていた。「自分勝手でいい」というアドバイスをもらったのは福士。「人間は1人1人が主役として人生を生きているわけだから、映画の主役であったとしてもそうじゃなくても、自分が自分の人生の主役であることに変わりはない。だから、自分勝手でいいんだと。主演の人がいるからって気を遣って演技をする……ということはしなくていい、と言われたことがすごく心に残っています」

山崎の支えとなった言葉は「とにかく楽しめ」だった。「デビューしてからずっと、不安だったり迷いを抱えながら演じていたんです。けれど、今回は100%、心からお芝居を楽しめた。役作りも撮影も大変だったけれど、それを含めて楽しかったんです。緊張してガチガチになっている私に三池監督は『楽しんで伸び伸びやっていいからね』と言ってくれた。どんな現場でもどんな役でも何に対しても楽しむこと、それを大切にこれからも女優をやっていこうと思います」

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もうひとつ、三池崇史という鬼才は、この2人の若者に第9回ローマ国際映画祭への参加という何とも嬉しい経験をもたらした。「神さまの言うとおり」はコンペティション部門のひとつ、ガラ部門に出品され、三池監督は日本人初となるマーベリック賞を受賞。きらびやかなスポットライトと大きな喝さいを浴び、ステージに立つ監督のその姿を目にして「嬉しかったと同時に、自分自身もああいった場にいつか立ちたいと思いました。機会があれば、海外の方とも一緒に仕事をしてみたいです!」と新たな情熱が芽生えた福士。山崎も「もっと英語ができたら作品の魅力を伝えられたと思うと残念で……。これからは語学にも力を入れていきたい!」と、自分たちの未来に向かって歩きはじめていた。

そして、最後に福士がメッセージとして添えたのは、この映画にも通じるあること。「瞬を演じてみて、ふだん当たり前に思っていることがどれだけ大切だったかって思ったし、生き残るためには運も必要だなって。それは現実の世界でも言えること。運なんてないんだって思っている人のところには運はやってこない、運はあると信じて努力している人は運が目の前に来たときにつかめると思います。そういう意識を常に持っていたいです」。福士が、山崎が、この先どんな運を手にするのか──。さらなる運をつかみ、その成長に驚く日はきっと近い。

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