「タイトルなし(ネタバレ)」寄生獣 完結編 まゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
原作が大好きです。原作が好き過ぎて、長い間映画版を観ようという気分にならず、今頃鑑賞。結果、これはこれで良かったです。
原作では、ミギーがシンイチの心臓を修復してから(混じる前と後では)シンイチが劇的に変わるのですが、映画ではそこまで変化を強調していません。実写の難しいところで、あんまり変わると違和感が出てしまうので敢えてなのかな?染谷さんの演技力が今ひとつなのか、撮り方なのか。よく分かりません。アクションのスピード感や激しさも、個人的にはもっと欲しかった。野生動物の動きを見て感嘆するような、あの感覚が欲しかった。時間的に厳しいんだろうとも思います。アクションシーン増やすと、この作品の最も重要なテーマやメッセージが伝わりにくいし、それではただのアクション映画になりかねない。費用の問題もあるでしょう。
原作ではシンイチには父親もいるのですが、映画では母子家庭の設定になっていて、終始暗くシリアスな雰囲気です。元々、人間がむごたらしく食い荒らされ、一方的に狩られるのを阻止すべく戦う話なので重いし暗いのですが。映画で母親の存在だけに絞ったことで焦点が明確になり、成功しています。
深津絵里がセンター分けでおでこ全開なのですが、授乳シーンはまるでマリア様のよう。最初「えっ、田宮良子を深津絵里がやるのか…可愛いらし過ぎるだろ。全然イメージ違うやん」と思いながら観ましたが、と〜っても良かったです。何より田宮良子から、「我々をあまり虐めるな」というセリフを岩明均が引っ張り出したということが、私的にはこの作品の最も尊い胸熱ポイント。最後、シンイチがわざわざ引き返して涙流しながらとどめを刺す場面もむちゃくちゃ良い。最終的に前向きで人間讃歌なのが良いです。根底にそこはかとなく流れるアニミズムも感じる。
宮崎駿が「人間なんてねー滅んじゃってもいいんだよ」と言いながらナウシカを描いていたという話(庵野氏がうわっ、この人ヤバいわと思ったらしい)を思い出しました。もちろんナウシカも好きですけどね。ええ。