劇場公開日 2014年4月18日

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「オーセージ群の小さな家で繰り広げられる熱い舌戦」8月の家族たち マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0オーセージ群の小さな家で繰り広げられる熱い舌戦

2014年5月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

冒頭、片田舎ののどかな光景を捉えたカットが続き、もう少しアメリカの原風景を楽しみたかったが、再開した家族が食卓を囲むと、いわゆる一杯飾りの舞台劇の様相を呈す。

そして互いを攻撃する舌戦が火蓋を切る。
ここでメリル・ストリープとジュリア・ロバーツがやや力み過ぎ。舞台劇を意識したのかもしれないが、互いに巧さを競うようでねちっこくオーバーな演技が鼻につく。
それに比べると、次女アイビーを演じるジュリアンヌ・ニコルソンが自然でいい。
さらにいえば、男優陣が筋書きに上手く食い込んでいる。とくに叔父のクリス・クーパーの演技には人生の重みを感じる。ある秘密を抱えてきたのだが、妻に「38年の歳月を無駄にされたくない」と吐くシーンは、この作品でいちばん心に残る。
なんのことはない、看板の大女優二人よりもまわりの役者の方がいい仕事をしている。

見終わると、オープニングでサム・シェパードが語った英国詩人T・S・エリオットの詩篇「ホローマン(空ろな男・うつろなる人間)」から引用した「人生はとても長い」と、長女の娘ジーンが肉を食す行為を「(死の)恐怖を食べているのと一緒」というくだりが大きな意味を持つことに気付く。
いつ死ぬのかわからないまま死ぬまで食べ続ける一生。それは動物も人も同じ。だが人が身に取り込むのは食物ばかりではない。長い人生には喜びだけでなく、悲しみや落胆もつきまとう。

マスター@だんだん