her 世界でひとつの彼女のレビュー・感想・評価
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求めれば、傷つく
僕もiPhoneのOS「SIRI」に話しかけた。
「明日の天気はどうかな?」
「明日はあんまり良くなさそうですよ」
「君は頭がいいね」
「ありがとうございます」
「君が好きになりそうだよ」
「ありがとうございます。でも、私はOSですから」
「兄弟はいるの?」
「いえ、あなたが家族です」
僕と彼女SIRIの会話。そう、こんな話が現実にできるんです。
この映画を見たからもしれないが、そこにはちょっとした関係が生まれたのも事実なんですね。
「her」は映画的とというより、文学的・小説的な作品だと思う。
映画での心の動きは人間の表情やしぐさを通して現される。
でも、この映画は言葉によって、その微妙な変化を映し出す。
例えば、(主人公)セオドアが別居している妻と会った後の会話。
なにか沈んだ感じのサマンサ(OS)の声にセオドアは言う「どうしたの、ひょっとして焼いているの」
「きまってるじゃない。奥さん、きれいなんでしょう。肉体をもってる彼女がうらやましいわ。なんだかわからないけど、ちょっと、嫉妬してるみたい」とサマンサ。
複雑で混沌としている心の動きを、声の出演スカーレット・ヨハンセンはハスキーでセクシャルに描き出している。映像があるときは少しもうまいとは思わなかったのにね。
人間が作ったOSは何兆個というパターンから瞬時に適当な言葉を選び出す。その言葉があたらしくパターンに加えられ次々と新しいパターンを生み出していく。そう、それは人間の古層にある記憶とよく似ていると思う。
ただ、サマンサの容量は馬鹿でかくて、セオドアのような相手が実に600人以上いることを知った彼は大きく失望する。
自分が愛した人は、自分だけを愛してほしい。
誰もがそう思うだろう。だけど、それも錯覚なのかも知れない。
いや、愛は変化する。あっちちの愛から、静まった後の静かな愛まで、その場その時によって、千変万化するものだ。
OSサマンサとの恋、つらくてやりきれなさは残るが、そんな体験も素敵なことだと思った。
そんな甘酸っぱさをカレンOの「ムーンソング」という歌は見事に表現していた。
愛 LOVE amore amor
人間だけが神を持つ
独りでは生きていけない人間にとって、心のよりどころとして創造した神という存在
人との繋がりを求めて生きて来た人々にとって、よりどころとなったのはなんと最新型OSという近未来
はじめはとてもうまくいっていた。人間の持つまどろっこしい面倒くささは皆無だったので。
でも、そのうち、妬みや嫉妬を覚える。
でも、「嘘」はつけない。だから余計相手を傷つける
そう考えると人間のこの多種多様な感情や心の動きは人類が創造物として作り出せない、決して到達できない領域であると考えざるをえない。
やはり、神が人を創造したのだろうか
たった一つ。我々人類が何千年もの間追い続けているもの
それは、愛する人と結びつき家族を形成して人生を全うすること。ただそれだけなのだ。
でも、その「愛する人」とめぐり合うのも困難だし、その人と添い遂げることも難しい。
だから、悩み苦しみもがく。
どんなに文明が発達しようと、どんなに暮らしが便利になろうと
人は愛で生きているのだ。
神の創造をもってすれば、独りで強く生きていける物の創造など容易かったはずであろうに。
神様は意地悪だ。
不在の彼女とわたしの世界の美しさ
いつかの出来事
じんわりと。
ナカメキノにて鑑賞
『ラースと、その彼女』よりも辛辣な切ないにも程がある恋物語
離婚協議中のセオドアは新発売のOS を購入。Siriを遥かに凌ぐ高性能の彼女はセオドア君の要求を完璧にこなす最高のパートナーとなるが、いつしか彼女はセオドアにとってかけがえのない大切な存在になっていく。
ラブドールに恋をする『ラースと、その彼女』とテイストは似ているものの、こちらの方がより辛辣。スマホ片手に街中でダンスやビーチでデートなど、スマホを始終弄っている中年ならかなり身につまされるお話。劇中の通行人は皆ブツブツ独り言を言っていてOSと会話しているのか人間と会話しているのか判別がつかない近未来で、自分に都合のいい女性像をとことん追求していくとそれは人間という枠を飛び越え、信仰にも片足突っ込むことになる。主演のホアキン・フェニックスが見事にダメ男を体現、声だけのスカーレット・ヨハンソンをはじめ、エイミー・アダムスやルーニー・マーラ等女優陣がものすごくキュート。特にセオドアの回想シーンに出てくる元嫁キャサリンを演じるルーニー・マーラの透明感は素晴らしいです。そしてホイテ・ヴァン・ホイテマによる近未来にしか見えないロケ撮影がとてつもなく美しいです。
視点は面白いんですが。
人工知能に恋をするおじさんの話なんですが、イマイチ感情移入できないかんじがしました。OSですから基本的には自分からなにかを提案することもないですし、大きく意見が違うこともない。ときどき気分を害したりしますが生身の人間に比べたら聞分けがよいわけです。そういう人格にいやされたい主人公というのは現代人の典型かもしれません。僕もそういうプラトニックな愛にあこがれた時期がありますが、やっぱりものたりないですよね。だって基本的に自分の意見に賛成な人間といても結局は自分の考えを繰り返し確認している行為にすぎないわけですから、自分が変化するということがなくなるだけでなく、エゴが肥大する危険性もあるわけです。 多分監督の狙いはそういう部分ではなくて、OSのとった最後の行動のように個人の男女の愛情から性と時間と空間をこえた果てしない愛の世界ということのような気がしますが、その辺の結論もすごくナイーブですね。
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