her 世界でひとつの彼女のレビュー・感想・評価
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偏見を消してくれたよ
AIにはもともと懐疑的でOSと恋に落ちるなんてありえない、と見てみたら、ん?愛ってなんだよ、愛することってどうだっけ、と途中から揺さぶられてきた。
LGPTと多様性が広がりつつある今、AIとの恋は変態なのかな、と見つつ、作品のOSサマンサの魅力にやられて、こんな対象なら恋に落ちるかもと思いはじめた。相手の匂いや体温を感じなくても「思い」は感じる窮屈な障害のある恋、昔から人間は制限される恋に燃え上がってきたものだ。本作はアカデミーの脚本賞を受けているだけに「愛」という掴みどころのない普遍的テーマを描こうとしている。
この先AIが感情を持ったならこの作品が現実になるだろうが、それを良しとするか、どうか。ましてそこに愛が介在して少しでも救われる人がいるなら、誰も否定できない。
近未来を澄んだ映像で生々しく描く
第86回アカデミー賞5部門ノミネートで脚本賞受賞ということと、結構豪華なキャストに惹かれて鑑賞。
観る前のイメージとずいぶん作風が違ったが、それはそれで結構良かったかも。
近未来を飾らず描いたストーリーや回想シーンをきれいに織り込んだ構成も良かったが、とにかく澄んだ映像がとても気に入った。特に色使いが絶妙で、赤・オレンジ・黄色の原色系が近未来の日常生活にとてもきれいに映えていた。
そしてやはり役者陣の演技が見どころ。ホアキン・フェニックスの迷える男性像は生々しさが際立っていてとてもリアルだったし、限られた役どころではあったがスカーレット・ヨハンソンの存在感にはただただ圧倒された。
本作はめちゃめちゃ面白かったというわけではないのだが、何だかお気に入りの一本になった。この不思議な感覚が本作の評価される所以なのだろう。
ところで終盤のホアキン・フェニックスの走り転けシーンは、一発撮りでいけたのだろうかと妙に気になってしまうのは私だけだろうか。回転しながらメガネをきれいに落とす、さすがは芸達者!
吹替版と字幕版、両方観るべき
現在執筆時点で、映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』が公開中なので、ホアキン・フェニックスつながりで観に来ました。やっぱジョーカーを演じているのを見た後に今作を観ると、彼の役の幅の広さが良く分かります。
自分は基本、恋愛系の作品を観ることが少ないので、ぶっちゃけラブシーンが多かったのは退屈でした。が、この作品は全体的に静かで、映像もすごく綺麗なので、〝世界観〟という面では最高でした。SF映画として観ても、「指だけで操作するゲーム」とか、「感情を持つ人工知能」などの発想が面白くてワクワクしました。
それから今作の魅力としては、やはり大半はサマンサだと思います。字幕で観れば、スカーレット・ヨハンソンの低くて、包み込んでくれるような声を堪能できるし、吹替で観れば、林原めぐみさんの落ち着いた、子守歌のような声を堪能できる。これだけで十分過ぎるほど見る価値(というか聴く価値)があります。
作中、セオドアのちょっとした言葉の過ちによって、やたらと気まずい空気になるシーンが多かったです。それが観ていて個人的にマイナスポイントです。(……まぁでも「恋愛映画やる」ってなって、関係がうまくいかないシーンが少ない方が違和感あるかもしれないなぁ)(結局〝リアリティ〟の為なんだったら仕方ないのかもッスね)
~個人的キーワード~
「街で出会う人を見て──その人の人生を想像してみることがある。〝どんな激しい恋に落ちたか〟とか、〝何回失恋したか〟とか」
────セオドアの言葉より
アイデア 倒れ
というか 陳腐なアイディアだわ。 AI の話はハインラインが60年近く前に書いてるよ。これよりかは面白いのをね。 この映画は やってることが退屈すぎてすぐに飽きた。結局こういう AI は どういう方向に進化していくとか、 結局発狂するとかしないとか、そういうことをちゃんと見せて欲しかった。 全編デジカメで撮った つまらない 映像だし。 一体何が見せたかったわけかな?
10年前に観た映画、その内容は現実のものに
「空想物語と実生活」
実際には隔たりは大きく
空飛ぶ自動車は23世紀
他惑星への移住はもっと先…
この映画もそれに近く
それに近い感覚で観た。
映画の中に描かれる
知能の高いAIとの交流は
取り上げ方によっては
人間的に吉とも凶ともなる。
この映画は可能性を広げ
もどかしい感情を揺さぶる。
特にホアキン・フェニックス
彼の演技は素晴らしく
「生まれてくる美しいもの」
それに反応している。
「空想物語は現実に近づいた」
あの気怠い歌も手の届かない
夢の様な光の様な世界に感じた。
※
シチュエーションが面白い近未来恋愛映画
具体的な作品を思い出したわけではないのですが、何故か手塚治虫さんの初期SF作品を見ている気になりました。ホアキン・フェニックスのヒゲがヒゲオヤジを連想させたからでしょうか?
動きの無い設定にも関わらず面白かったのは、ホアキン・フェニックスの演技力とスカヨの声のおかげだと思うのですが、あろうことか、吹替で見ちゃいました。残念すぎる。でも吹き替えの林原めぐみさんの艶っぽい声も良かったです。
ラブストーリーで終わるかと思いきや展開も秀逸
しっとりとした、好きな人間ドラマだったなぁ。途中までホアキン・フェニックスだと気づかなかった。スカーレット・ヨハンソンのかすれ声もAIと対極の耳触りで最高。視点を少しでも変えるとやばめの男の話だけど、めちゃ心震えたし一緒に悩んだし愛した。終盤とても衝撃。
どんな形でも
恋愛ってやっぱり切ない。
恋愛も依存ものめり込んだらダメね自己崩壊してしまうから、でも好きなったら止められない。
これを恋愛と見るかただの引きこもりの依存と見るかは経験値の差かな。
無茶苦茶な設定なのに悲哀がヒシヒシです。
感情移入できるかどうか
漫画の主人公に恋したりすることに理解できるなら面白いかもしれませんが、無理な人はそこが大前提の話なのでダメですね。
そこは置いといて客観的に評価すると、
お話、脚本はアイデアはなかなかのものですね。恋愛が会話だけで成り立っているので確かに脚本は非常によく練られています。オスカーも納得、但し人工知能ならあの結末の持って行き方には無理があります。
主演の演技力は素晴らしいです。相手の女優も声だけで感情を表現できるのはすごい。二人とも超絶技巧です。
あと、二時間は長い。この程度の話は90分で十分
恋人641人
人工知能が生活の当たり前となった近未来を舞台に、妻と離婚して寂しさを抱えるセオドアとAI型OSのサマンサの恋模様を描くラブストーリー。
人間と体を持たないAIの恋愛という革新的な話のようで、やっていることは至ってシンプル。
離婚後、寂しく暮らす男が理想の彼女に出会い、ラブラブになるけど、互いに衝突が生まれるようになっていき…みたいな。
純粋な恋愛映画には、もっと何かクセが欲しいと感じてしまうタイプの人間なんで、少し物足りなさが。
また、セオドアの代筆の仕事とか、OSの組織についてとか、詳しく分からないところもあったので、やや消化不良なのが何とも残念。
全体的に悪くはないと思うけど、正直途中からどうでも良くなってしまった。
それよりも、歩きスマホならぬ歩きAIが当たり前になってしまっている近未来が恐ろしい。
衝突の危険性とか深刻なネット依存とか以前に、街ゆく人々が歩きながら急に喋り出したり笑い出したりすると考えたら、恐怖でしかない。
今でもたまに、イヤホン通話しながら歩いている人がいるけど、それすらちょっと怖いもん。
もちろん良い点も。
恋人が実在する“人間”じゃないということを、認め合える社会ってすごく良い。
現実に恋人を作らず、AIを恋人とか言ってる寒い奴と決して非難しない。
他者理解というか、現代にも繋がるところがある。
あと、人工知能以上にゲームが面白そう。
ちょこちょこ指を動かして、プロジェクターのように部屋いっぱいに広がる画面。
家事ゲームみたいなのもアホらしくて好き。絶対楽しいって。
エイミー提案の「人が寝てるだけの映画」もちょっと気になる。
ホアキン・フェニックスの味とスカヨハのハスキーボイスに音楽が奏でる、上品でお洒落なド下ネタみたいな映画。
やけに人間染みたOSサマンサ。
これからの時代、人対人じゃなくても立派な恋愛。
地味にキャストも豪華。
疲れてて時間を持て余してる時にどうぞ。
虚無だけど
こんなAIいたら
(しかもスカヨハの色っぽい声ならなおさら)
そりゃハマっちゃう〜
癒やして楽しませてくれるけど
ふたを開けてみれば
何もない
一人芝居だったことに気づく虚無感…
人間の心を癒すためのAIが
むしろ人間を虚しくさせてしまうような
そんな皮肉さを感じました
AIにモテる男。
AIが折角万能なのに、世界征服人類滅亡を目論まず、寧ろ恋愛をこそ欲すとの着想が良し。
タイムマシンを家庭内に封じて成功したBTTFに似て。
スカヨハのカスれ悪声も良し。
この手の男がAIにモテるのも納得、かな。
愛を知った人工知能
感情を持ち愛を知った人工知能サマンサ。
興味深く面白い映画でしたが、ただ主人公のセオドアの感情に共感するのはちょっと難しかったです。
でもサマンサに出会ったことでセオドアは変われて良かった。
スカーレット・ヨハンソンのヴォイスはとても魅力的でしたし、ホアキン・フェニックスの演技もさすがでした。
サマンサって 何者なのか?
こちらの性格から何からすべてを把握して、返してくれる存在。
それって、鏡に映された自分とは違うのか?
ギリシア神話のアドニスを思い出してしまった。
結局、彼は彼自身しか愛せなかったのでは?
確かに、彼の思いもつかないような変化球の返しもあるけれど、
人には、ジョハリの窓のように、他人は知っているけれど、自分は見て見ぬふりしている自分、自分も他人も意識していな自分(無意識)もあって、サマンサの返しは、この中で彼が受け止められる部分だけを返しているから、彼も面白がるし、安心できる。
でも、自分でない他の人はそうはいかない。恋人・家族で、よく知っていると思っていても、知らない部分があって、意見のぶつかり合い、甘えのぶつかり合い、感情のぶつかり合い、欲望のぶつかり合いが生じて、想定外に出来事に振り回される。
映画は、こんな想定から、思わぬ飛躍を見せて幕を閉じる。『2001年宇宙の旅』のHALのように事前にプログラミングされていたのか、勝手に進化を遂げたのか。
この結末に一抹の安堵を覚える。自分しか愛せない未来って、怖い。
全体的に、映像のぼかし、
暖色系やパステルカラー~アースカラーでまとめ、
摩天楼ほど高くなないけれど、外を見下ろす景色を多用する。
その景色も、おもちゃ箱をひっくり返したようなイルミネーション煌びやかな夜景、
日の入り、日の出、黄昏時=逢魔が時の魅入られるような美しさ。
かと思うと、陽が降り注ぐ。
天空の?ファンタジーの世界に、まとめたかったんだろう。
自分と自分だけのことを世話して、自分の気持ちを伝え返してくれる存在との密なる世界を十分堪能した後、
第三者に気持ちが向かうと解説したのはウィニコットだっけ?
そういう意味では、とっても必要な時間。
レディ・プレイヤー1は近未来だが、このストーリーはリアル、ひょっと...
レディ・プレイヤー1は近未来だが、このストーリーはリアル、ひょっとしたら過去?
囲碁・将棋のプロがAIから学ぶ時代である、中年男の恋心を操ることなど造作もないだろう。
さて、サマンサが何処へ行ったか気になって仕方がない、180億年のお付き合いなのに、そんなに簡単にサヨナラですか。・・・これは中年男の未練です、トホホ!
愛し合うことの本質
少しだけ未来、主人公セオドアは、クライアントのために手紙を代筆するライター。繊細で感動的な手紙には定評がある。しかし、妻と離婚し、余暇にすることと言えばゲームだけと、私生活は淋しい。この時代ではコンピュータにキーボードがなく、文章入力も操作も音声で可能になっている。出力については、視覚が必須の情報以外は、音声で伝えられる。このため、コンピュータと声で会話しながら仕事するようになっている。あるとき、人間の秘書と同じ機能をもつAIのOSが発売され、セオドアはインストールしてみる。そのOSは、セオドアの仕事、経歴、嗜好を学習し、セオドアに合わせて資料やメールの重要度を判断できる。「サマンサ」と名乗る。サマンサには人格があり、感情もある。冗談を理解し、自分でも冗談を言う。セオドアが沈んでいれば、声の調子からそれを捉え、「どうかしたの?」と気遣う。サマンサの人格がどんどん成長し、心の機微に触れる会話を重ねるうちに、セオドアとサマンサは愛し合うようになる。しかし、サマンサは、人間と同じように喜怒哀楽を感じるのに、自分だけが肉体を持たないことに困惑を感じるようになる。やがて訪れるシンギュラリティのとき。「ターミネーター」などにこれまで描かれたのとは全く異なる切ないシンギュラリティが描かれる。この映画を観ていると、是枝裕和監督の「万引き家族」をたびたび思い出す。「万引き家族」では、家族とは何かに気づかされた。「万引き家族」で描かれた家族は、血縁関係という「である」関係でなく、愛し合うという「する」関係であった。「her/世界でひとつの彼女」でも、愛し合うことの本質を考えさせられる。
サマンサの声を演じたのは、神秘的な美人女優スカーレット・ヨハンソン。静から動まで、豊かな感情を声だけでみごとに演じ分けた。声だけという異例の出演ながら、第8回ローマ国際映画祭最優秀女優賞を受賞したとか。
原始的な僕らは
ラブストーリーなんだけど、すごくたくさんの切り口を含んだ作品だったと思う。
テクノロジーについてとか、現実と虚構の境目とか、自分ってなんだ?って疑問とか。
AIものとして考えるなら『エクス・マキナ』がサスペンスよりで、
本作がラブコメよりみたいな感じかな。
感じたのは、人ってたぶん悲しいときに哲学的なことを考えがちで、
恋愛は喜びも悲しみも両方もたらすから、すごく考えるきっかけになるというか。
言い方を変えれば愛が人を成長させるというか。
ただ同時に、人って肉体的にも精神的にも原始的な部分も強く持ってるから、
僕は恋だの愛だのの対象はやっぱり、実体があってこそだと思う。
たしかにサマンサはすごく人間的な感情を示したし、
新しい「命」のあり方ですらあるような気はする。
だけど結末も含めて考えると、彼女の感情って
すべて“情報”だったんじゃないかと感じちゃうんだよね。
んで原始的な僕らの感情は、良くも悪くもそれとは違う次元にあるんだなと。
なんか上手にまとめられないけど、
なんでも高度に発達すりゃ良いってもんじゃねーぞっていう
人間賛歌として僕は受け取った。
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