「みんなそれぞれにある「自分のいるべき世界」を描いた作品」her 世界でひとつの彼女 にちさんの映画レビュー(感想・評価)
みんなそれぞれにある「自分のいるべき世界」を描いた作品
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この作品を観て、人間と人工知能が恋に落ちることは現実的にあるんだろうなぁと思った。人間同士でも、実際には会ったことも見たこともないオンライン上だけあるいは手紙だけのやりとりの相手に恋をすることはあるし。そしてこの作品の良いところは、そうした人間と人工知能とのコミュニケーションに対し、「やっぱり実体のある人間同士のコミュニケーションが大事だよね」のような陳腐な演出ではなく、相手が人間だろうが人工知能だろうが「自分に合った世界がある、それを自他ともに認め受け入れる」ことを描いたことだと思う。作中では人間のパートナー間で、言葉にすることを強要してしまったり、部屋をきれいにすることを強要してしまうことを一端として破局してしまう演出があり、また人工知能サマンサにとっては、人間の言語で人間の思考速度に合わせてコミュニケーションするよりもコンピューター同士でコミュニケーションするほうが快適であり、自分にとっての心地よい環境を覚えたサマンサは、人間らしさに近づこうとし人間との関係を維持するよりも自分たちの快適な世界に住むことを決めたのである。相手との違いは、時にはそれを互いに許容しあい工夫すれば共存できるものだが、時としてどうしようもなく別々の道を選ぶしかないこともあるんだろう。そうしたことを、人間と人工知能とで描いた作品だと思う。
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