「恋人641人」her 世界でひとつの彼女 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
恋人641人
人工知能が生活の当たり前となった近未来を舞台に、妻と離婚して寂しさを抱えるセオドアとAI型OSのサマンサの恋模様を描くラブストーリー。
人間と体を持たないAIの恋愛という革新的な話のようで、やっていることは至ってシンプル。
離婚後、寂しく暮らす男が理想の彼女に出会い、ラブラブになるけど、互いに衝突が生まれるようになっていき…みたいな。
純粋な恋愛映画には、もっと何かクセが欲しいと感じてしまうタイプの人間なんで、少し物足りなさが。
また、セオドアの代筆の仕事とか、OSの組織についてとか、詳しく分からないところもあったので、やや消化不良なのが何とも残念。
全体的に悪くはないと思うけど、正直途中からどうでも良くなってしまった。
それよりも、歩きスマホならぬ歩きAIが当たり前になってしまっている近未来が恐ろしい。
衝突の危険性とか深刻なネット依存とか以前に、街ゆく人々が歩きながら急に喋り出したり笑い出したりすると考えたら、恐怖でしかない。
今でもたまに、イヤホン通話しながら歩いている人がいるけど、それすらちょっと怖いもん。
もちろん良い点も。
恋人が実在する“人間”じゃないということを、認め合える社会ってすごく良い。
現実に恋人を作らず、AIを恋人とか言ってる寒い奴と決して非難しない。
他者理解というか、現代にも繋がるところがある。
あと、人工知能以上にゲームが面白そう。
ちょこちょこ指を動かして、プロジェクターのように部屋いっぱいに広がる画面。
家事ゲームみたいなのもアホらしくて好き。絶対楽しいって。
エイミー提案の「人が寝てるだけの映画」もちょっと気になる。
ホアキン・フェニックスの味とスカヨハのハスキーボイスに音楽が奏でる、上品でお洒落なド下ネタみたいな映画。
やけに人間染みたOSサマンサ。
これからの時代、人対人じゃなくても立派な恋愛。
地味にキャストも豪華。
疲れてて時間を持て余してる時にどうぞ。