「サマンサって 何者なのか?」her 世界でひとつの彼女 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
サマンサって 何者なのか?
こちらの性格から何からすべてを把握して、返してくれる存在。
それって、鏡に映された自分とは違うのか?
ギリシア神話のアドニスを思い出してしまった。
結局、彼は彼自身しか愛せなかったのでは?
確かに、彼の思いもつかないような変化球の返しもあるけれど、
人には、ジョハリの窓のように、他人は知っているけれど、自分は見て見ぬふりしている自分、自分も他人も意識していな自分(無意識)もあって、サマンサの返しは、この中で彼が受け止められる部分だけを返しているから、彼も面白がるし、安心できる。
でも、自分でない他の人はそうはいかない。恋人・家族で、よく知っていると思っていても、知らない部分があって、意見のぶつかり合い、甘えのぶつかり合い、感情のぶつかり合い、欲望のぶつかり合いが生じて、想定外に出来事に振り回される。
映画は、こんな想定から、思わぬ飛躍を見せて幕を閉じる。『2001年宇宙の旅』のHALのように事前にプログラミングされていたのか、勝手に進化を遂げたのか。
この結末に一抹の安堵を覚える。自分しか愛せない未来って、怖い。
全体的に、映像のぼかし、
暖色系やパステルカラー~アースカラーでまとめ、
摩天楼ほど高くなないけれど、外を見下ろす景色を多用する。
その景色も、おもちゃ箱をひっくり返したようなイルミネーション煌びやかな夜景、
日の入り、日の出、黄昏時=逢魔が時の魅入られるような美しさ。
かと思うと、陽が降り注ぐ。
天空の?ファンタジーの世界に、まとめたかったんだろう。
自分と自分だけのことを世話して、自分の気持ちを伝え返してくれる存在との密なる世界を十分堪能した後、
第三者に気持ちが向かうと解説したのはウィニコットだっけ?
そういう意味では、とっても必要な時間。