「どんな時代であっても」STAND BY ME ドラえもん ken1さんの映画レビュー(感想・評価)
どんな時代であっても
僕が漫画ドラえもんに出会ったのは、まだ漫画を読んだこともない、漫画がなんなのかさえ知らなかった幼稚園児の頃だった。母の知人の家を訪ねたとき、その家の小学生のお兄ちゃんが僕に読ませてくれたドラえもんの第9巻。驚くほど面白かった。すぐに虜になった。あの時の衝撃は今でも忘れられない。
あれから50年余り。アニメが放送され、ドラえもんは国民的、あるいは世界的に世代を超えた存在になっていったのだけど、僕の心の中に染みついているドラえもんは(というか思うに、この漫画はのび太の物語なのだけど)普遍的な人間としての倫理観とはなんなのかということを、事あるごとに教えてくれる。
遅ればせながら配信でみた本作は、とりわけドラえもんの話の中でも感動的なものを抽出してうまく話を繋げている、いわば、幕の内弁当みたいなものなのだけど、やはり涙が止まらない。もう何度も読み返し、何度も観た話なのに。
誰もが認めるすごい人と比較すると、僕は、あるいは、市井に生きる多くの人が、のび太のようにこれといって優れたところのない人間なのだと思う。だけど、人間にとって大切なことは、のび太のような他人を思いやる優しさや、勇気を持ち合わせているかどうかということであることを本作は教えてくれる。
強い者に惹かれる人が多い時代だけど、どんな時代が訪れようと、本当に大切なこと、人としての普遍的な倫理観は変わることはない。僕は自分がのび太でありたいと思うし、それで良いのだとこの作品は教えてくれている気がする。
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