「全てを失った時、見えてくるもの」オール・イズ・ロスト 最後の手紙 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
全てを失った時、見えてくるもの
インド洋をヨットで単独航海中、コンテナに衝突して遭難、男の決死のサバイバル。
「ライフ・オブ・パイ」「コン・ティキ」など洋上サバイバル映画がプチブーム(?)だが、本作は極めて異例。
舞台は海、船の上のみ、出演者はロバート・レッドフォードただ一人、台詞もほとんどナシ、役名もナシ。
男が航海に出た理由も明かされない。状況説明も無い。突然のコンテナ衝突で映画は幕を明ける。
実験的でありながら、第一級の作品に仕上がっている。
老体に鞭打ったロバート・レッドフォードの演技が圧巻。
台詞ではなく、演技、表情、姿、佇まいで全てを見せきる。
台詞や状況説明は無くとも、その存在感だけで海を愛する孤高の男という背景すら見えてくる。
ハリウッドのレジェンドの一人が、また一つ名を残した。
ヨットが浸水し、救命ボートに乗り移るも、また浸水が。
嵐が襲う。飢えや渇きが襲う。
サバイバル映画のあるあるは展開されるも、映画を盛り上げる為の要素ではない。
極限状態の過酷さを無情に描く。
助けは居ない。頼れるのは自分だけ。決して諦めない根性と精神力。
絶望的状況に陥った時、自分自身が試され、大切なものが見えてくる。
映画も、あらゆるものを削ぎ落として、本質が見えてくる。
たった一つのアイデア、たった一人の出演者だけでも、映画は魅了させる事が出来るのだ。
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