「自由とは、人が持つ生まれながらの権利」それでも夜は明ける 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
自由とは、人が持つ生まれながらの権利
本年度アカデミー賞作品賞受賞作。
隣町の映画館での上映がようやく決まり、早速観に行ってきた。
奴隷問題を扱った映画は多く、去年も「リンカーン」や「ジャンゴ」があった。
僕は、奴隷問題や人種差別を扱った映画が好きと言ったら言葉が悪いが、非常に胸に響く。
が、ここまでがっつり真っ正面から捉え、ズシリと感じたのは初めてかもしれない。
自由黒人だった主人公ソロモンは、白人の裏切りで奴隷として売り飛ばされる。騙された事も、自分が置かれた状況の説明も無く、突然に。
ここから見る側は、ソロモンの身になって、彼の辿った苦しみの歳月を体感する事になる。
ソロモンの身に降りかかるのは、恐怖、絶望、不安、過酷な重労働、不条理な暴力…。
味方も信用出来る者も居ない。目をかけてくれる者は居ても、助けてはくれない。
とても人が人にするとは思えない酷たらしい仕打ち。
黒人と白人の何が違う?
目を背けたくなる場面もある。
しかし、目を背けてはいけない。
こんな事がほんの一世紀半前まで実際にあったのだ。
オスカーを受賞したルピタ・ニョンゴの熱演が話題だが、受賞を逃した二人にこそ引き込まれた。
キウェテル・イジョフォーは、ソロモンの悲しみ、苦しみ、決して人としての誇りを捨てない姿を体現。
マイケル・ファスベンダーはソロモンの2番目の主人で、奴隷たちに対して情けも慈悲も無い。その一方で、ルピタ・ニョンゴ演じるパッツィーに歪んだ愛情を持つ。冷酷でもあるが、惨めで哀れな男にも見えた。ファスベンダーにとっても、苦難の役だったろう。
実話である為、オチは分かっている。苦しみの12年の末、遂に自由を取り戻す。心揺さぶり、深い感動を呼ぶスティーヴ・マックィーンの演出は素晴らしい。
自国の暗部であり汚点である題材な為、映画会社は及び腰だったそうだが、本作の製作に尽力したブラッド・ピットのプロデュース能力も称えたい。
スピルバーグの「アミスタッド」で、名キャッチコピーがあった。
“自由とは、人が持つ生まれながらの権利”
彼らは奴隷でも、ましてや誰かの所有物でもない。
一人の人間なのだ。
その自由は誰にも奪えやしない。
別に賞を穫って賞賛されたからじゃない。
現時点での今年のNo.1だ。