「周囲に恵まれた男。」ダラス・バイヤーズクラブ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
周囲に恵まれた男。
アカデミー賞の発表まであと少し、今作を観て更に思った。
「…つくづくディカプリオって、運が悪いよな。」
いやいや、そんなこといってとるかもしれないけど(ゴメン)
M・マコノヒー、今思えばウルフ・オブ~にも出ていたっけ。
あの作品でも彼はまだ激ヤセしてたけど、その原因がコレ。
実在したHIV感染者の主人公を演じるためだったのだ。
1980年代、まだエイズが同性愛者同士でのみかかる病気だと
信じられていた頃、娼婦好きのカウボーイ、ロンは突然医師
から余命30日だと告げられる。何で?俺はゲイじゃないのに!
と猛反発するロンだが結果は覆らない。酒とドラッグと娼婦に
まみれた生活を送ってきたロンの乱れた行為に原因があった
ワケだが、当時エイズ治療に無策な政府や製薬会社によって
国内では未承認薬が得られないのを知ったロンは、国外から
密輸をして会員制のクラブを設立、会費さえ払えばタダで薬を
配るという画期的な販売ルートを確立させる。
前半で、コイツ頭悪そうだな(ゴメンね)と思ったのも束の間、
ずいぶんと頭のいい男だったので驚いた。
初めは自身の為とはいえ、彼のアイデアで設立したクラブは
たちまち大反響を呼び連日の行列。遂に政府も危機感を抱く。
彼には頼れる仲間がいた。エイズと判明するまで親友だった
警官には裏切られるが、代わりにドラッグクイーンのレイヨンと
知り合う。ゲイ嫌いのロンは彼女を冷たくあしらうが、やがて
クラブのパートナーとして迎え入れる。とはいえ、レイヨンは
エイズ以外に重度のドラッグ依存症。明けても暮れても治らない
彼女の醜態に苛立ち、度重なる押収でクラブも危機を迎えるが…
マコノヒーの演技はその20キロを超える減量に劣らない説得力で
観客を圧倒するが、彼の相棒役のJ・レトーがそれを上回る圧巻の
演技で観客を魅了する。美しさも醜さも持ち合わせた彼のサポート
あってのマコノヒー主演であると実感させられた。更に医師役の
J・ガーナーも素晴らしい。ロン本人も周囲に恵まれた男だったが
彼を演じる俳優も周囲に恵まれている。まさに相乗効果の賜物。
内容は重いが感動作というのではない。あくまで姿勢は変わらず、
酒も女も舞い続けるし、彼は死ぬまでテキサスカウボーイである。
(林原生物科学研究所まで出てきてビックリ。その行動力にも驚く)