「今年度5本の指に入る傑作」インサイド・ヘッド S.S.コロンビアさんの映画レビュー(感想・評価)
今年度5本の指に入る傑作
見た人は誰しも感じると思うのですが「よくこんなアイデアをエンターテイメントに昇華させたなあ」という事にまず驚かされる。
誰しも人生は選択の連続な訳ですが、その1つ1つの選択にどのように感情が作用しているのか。そして、その選択の結果としての記憶の蓄積、それによる人格の形成。単純にそれらの要素が見ていて勉強になるだけでなく、1本のストーリーとして飽きずに最後まで面白いのが素晴らしい。
夢の扱い方や、イマジネーションランドのあれこれ(妄想彼氏(彼女)とかみんな考えるよね)、思考という列車、幼年期に考えていた夢のあれこれ、それを脱皮して成長していく過程、他者の感情に関する描写(奥さんが元カレを思い出すシーンとか最高)もう良かった点を列挙していくとキリがないわけです。が、この映画を見て良かったと思うのは、こういう自分の中の自分を知ることによってダメな自分や嫌いな自分もまた受け入れてあげる事が出来る気がすること。
なにより、自分を知るという事は他人を知るという事でもあり、自分の弱さやダメな部分と向き合うという事は他者を思いやる、慈しむという事にも繋がると思うわけです。人間1人1人、経験や環境によって個性が違うのは当たり前なんですよね。そういう点からも非常に意義深い作品だと思いました(事実と意見は混同されがちという描写なんて含蓄があって良かったです)
ドリカムのオープニングははっきり言って誰得です。あんな他人の結婚式で流されるビデオのようなものを延々垂れ流されても。なになに、感動の押し売り?しかもあの曲は主題的な扱いなのかと思いきや、結局オープニングでしか流れないという。日本の映画ってこういう観客の神経を逆なでするというか、「関係者の事情によるブッコミ」が本当に多くて、せっかくの良作に余計な手を加えないでほしいと思う。そこだけが心底残念でした。