「父娘愛の奇跡」7番房の奇跡 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
父娘愛の奇跡
基になった冤罪事件があるそうだが、フィクション。
泣かせの設定や要素がてんこ盛りで、あざとくも感じる。
しかし、そのあざとさに引き込まれ、すっかり感動していた。
子供並みの知能の父とその賢い幼い娘。ある時父が、幼女殺人の罪で投獄され…。
弁護士となった娘、イェスン。ある公判を控え…。
現在と過去が交錯して展開し、見ていくと、この登場人物とあのエピソードが繋がっている事が分かり感動ひとしおだが、やはり一番の見所は過去パートの父娘愛。
知的障害者だから父親失格なんて事は無い。イェスンにとって、父は父なのだ。
いつも一緒に居て、一緒に笑って、一緒に遊んで、一緒にセーラームーンの歌を歌って。
イェスンの幸せそうな顔を見よ。誰がこの幼く可愛らしい娘から大好きな父親を奪えるか。
が、引き離された。
あまりにも唐突に。不条理に。
そもそも、父が殺したという証拠は無い。たまたま居合わせた者の不確かな目撃証言だけ。
しかも、殺された女の子の父親は警察庁長官。
そこに何かしらの圧力とずさんな捜査(いや、捜査と言っていいようなレベルか?)があった事は言うまでも無い。
父にしてみれば、何故こんな所に連れてこられ、何故こんな変な所に入れられているのか分からない。
早く家に帰らないと。イェスンが待ってる。
同じ部屋に居る人たちが何かおっかない。
同じ房の囚人たちが最初はすぐ手を上げたり韓国映画お馴染みの柄の悪い連中だったが、偶然にも“兄貴”の命を助け、何だかんだ仲良くなる。
元暴力団の兄貴が義理堅く、その計らいで、何と刑務所内で父と娘が再会!
この策を凝らした会わせ方~帰し方がとてもコミカルで、あたふたあたふたの囚人仲間が温かい人間味たっぷり。皆、イェスンと一緒に居る時は普通の優しいおじさん。
父娘愛に心打たれたのは、刑務所の課長も。
この人物も最初は唐突に暴力を振るったりムカつく偉そうな奴だっが、これまた偶然にも父が彼の命を助け(どんだけ都合いい!?(笑))、課長の中で父を見る目が変わる。
課長の心変わりもベタと言ったらベタだが、邪険から一転、父の無実を信じる姿には目頭熱くさせられる。
裁判が迫る。
皆で協力。
準備も全て整った時、不条理な権力とは降りかかってくるもの。
被告人席での父の発言にやりきれないものを感じつつ、ただひたすら娘を想う気持ちに胸打たれた。
悪い事は続く。判決出たばかりだと言うのに、あまりにも早すぎる執行。
別れの時。
いつも通り娘の前では明るく振る舞う父だが、角を曲がって娘から姿が見えなくなった時、崩れ落ちた。
これから自分の身に何が起こるか分かっているのだ。
自分の命が惜しいからじゃない。それは、イェスンをとてもとても悲しませる事。
父の悲痛の絶叫。
思い出すだけでも目頭熱くなってくる。
現在パートの話はもう分かる。
弁護士になったイェスンが亡き父の無実を勝ち取ったのだ。
ハッピーエンドだが、イェスンにとってそれは父への些細な恩返しに過ぎないかもしれない。
だって父はそれとは比べ物にならないくらいのいっぱいの笑顔や幸せや愛情をくれたのだから。