「結婚は、大いなる誤解から」わたしのハワイの歩きかた cmaさんの映画レビュー(感想・評価)
結婚は、大いなる誤解から
チラシを目にしたときは、「こんな80年代みたいな映画を、今さら…」と、引いた。けれども、前田監督の新作と知り、がぜん興味と期待が。「婚前特急」の前田監督ならば、きっと観たことのないような世界をみせてくれるはず、とわくわくして劇場に向かった。
のっけから、やられる。ネックレスの留め具がだらんとぶらさがった、榮倉奈々演じるヒロインの大写し。ぱっとしないのは一目瞭然だが、脱力しているようで意外にしたたか。彼女と物語がどう転がっていくのか、見当がつかない。無駄に⁈美脚をさらしまくり、時には小気味よい啖呵を切り、スクリーンをところ狭しと闊歩する。
ゆううつな日常から脱出して、ハワイでうはうは!な日々なんて当然続かない…と思いきや。酔った勢いと人なつこさが身上の彼女は、様々な出会いを経て、意外に調子よくハワイを渡り歩いていく。さて、彼女のゴールはどこなのか? …なんていう定石のストーリーさがしを忘れさせるほど、彼らの丁々発止のやりとりはイキイキと楽しく、時にどきりとさせられた。
こんな男なんて!が…この人しか、いない♡に変わってしまうプロセスを丁寧に描く前田監督×高田亮(脚本)の手腕は、「婚前特急」から健在。今回は、より多くの登場人物たちをさらにこんがらからせ、真剣なのに可笑しい、絶妙なやり取りを展開させる。ピークは海辺のレストランでの大乱闘。「ローマの休日」での大立ち回りを彷彿とさせる、チャーミングさと活気にあふれ、大いに笑った。
からりと爽快でいて、ほろ苦さに裏打ちされた、余韻ある笑いを存分に楽しめる快作。梅雨のじめじめも、じっとりとした暑さも、ガツンと吹き飛ばしてくれる。大瀧詠一さん(!)や竹内まりや×山下達郎コンビが彩りを添える音楽も必聴だ。